風邪の予防と漢方薬

はじめに

コロナウイルス(COVID-19)の流行がようやく落ち着きを見せたと思ったのも束の間、冬の訪れとともにインフルエンザやマイコプラズマ肺炎など、別の感染症が猛威をふるっています。。

かつては、体調を崩せば病院へ行き、薬局で必要な薬を手に入れることが当たり前でした。
しかし、現在では、医薬品の製造や流通の問題、薬価の引き下げなどが重なり、抗生物質や咳止めといった風邪薬が品薄・欠品となる事態が続いています。

このような状況の中で、私たちが出来ることは「症状を発症してからの対応」ではなく、いかにしてコロナウイルスやインフルエンザ、風邪に感染しない身体を作ることではないでしょうか。

🌿 中医学の知恵「未病先防(みびょうせんぼう)」
中医学には「未病先防:みびょうせんぼう」という考え方があります。
これは、病気が発症する前に体質をみながら対応するという「予防医学」に近い考え方です。
”未病”ケアを得意とする中医学の考えを取り入れ、感染症に負けない身体作りを目指してみませんか?

感染症カレンダー

実際に風邪をひいてしまったときの中医学的なケアについては👇
カゼと漢方薬 – 日々の生活に漢方を

中医学で考える風邪の予防

1.ウイルスや細菌から身体を守る

板藍根(ばんらんこん)は、「漢方の抗生物質・抗ウイルス薬」と呼ばれ、中国の家庭では風邪やインフルエンザの常備薬として古くから親しまれています。

中国では、1989~1990年のウイルス性肝炎の流行時に、効果的な抗ウイルス薬がなかったことから「板藍根」の研究が進み、治療と予防の中心的な薬剤として使用されました。
さらに、2003年に中国で大流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の際には、中国の衛生局が「板藍根に予防効果がある」と発表し、中国のみならず日本でもその名が広く知られるようになりました。

🌱漢方的な働きと効能

板藍根の主な働き
🔺清熱解毒(せいねつげどく)
🔺涼血利咽(りょうけつりいん)
→熱による炎症や血中の熱を取り除き、喉の痛みや熱を下げる働きがあります。

現代医学的にも
🔺抗ウイルス作用(多くのウイルスの働きを抑制)
🔺抗菌作用(幅広い抗菌スペクトルを持ち、多種類の細菌に対し効果)
があることが報告されています。

こんな時にオススメ!
✅周りで風邪が流行っている時に
✅人混みに行く前/行った後に
✅テストを控えた受験生や仕事を休めない時に
✅疲れからヘルペスが出そうな時に

💡飲みやすく、携帯しやすい形も◎

板藍根には
☕ 顆粒タイプ(お湯に溶かしてお茶のように)
🍬 飴タイプ(外出時の喉ケアに)
など様々なシーンで使用できます。
また、健康食品のため子供から年配の方まで安心して使用できます。

2.バリア機能を高める

ウイルスや細菌、花粉などから身を守るには、「体の中に侵入させない防御力=バリア機能」がとても大切です。
この感染源から身体を守る力を中医学では「衛気(えき)」と言い、皮膚や鼻・気管支などの粘膜細胞の強化と関係し、外的刺激から身体を守る働きをしています。

衛気力のチェック!
✅風邪をひきやすい
✅冷房や冷たい風に弱い
✅汗をかきやすい
✅鼻水が出やすい、垂れる

「黄耆(おうぎ)」や「白朮(びゃくじゅつ)」は、昔から「衛気」を高める生薬として知られています。
この2つはよくペアで使用され、衛気力が弱い方はこの2つが含まれた漢方薬である「衛益顆粒(玉屏風散)」を使用すると良いとされています。

🌸 花粉症対策にも!
この「衛気」を高めておくことは、花粉症の予防・軽減にもつながります。
詳しくは👉「花粉と漢方薬 – 日々の生活に漢方を

3.乾燥を防ぐ

感染症の予防には、「衛気」の働きを高めることが大切ですが、皮膚や粘膜などのバリア機能を保つには、ウイルスや細菌などの異物を洗い流すための”潤い”も必要となります。

乾燥度のチェック!
✅口を開けて寝ている
✅空咳がよく出る
✅喉や鼻の中が乾燥しやすい
✅呼吸器系が弱く、風邪を引くと咳が止まらない

中医学では、「邪気(ウイルス、細菌など)」の侵入にかかわる皮膚や目/鼻/喉の粘膜は「肺」がコントロールしていると考えます。
漢方薬では「肺」の働きを高め潤いを与える麦味参(生脈散)や「肺」や「胃」の潤いを補う百潤露などを使用すると効果的でしょう。

4.幻の茸シベリア霊芝(しべりあれいし)

ロシアのシベリア地方に自生する「チャガ(シベリア霊芝)」は、その地域に“がん患者が少ない”という調査結果から世界中の注目を集めたキノコです。

地元の人々は、シベリア霊芝をお茶として飲む習慣があり、その背景には、そ免疫の調節や炎症の抑制、利尿などの効能があるということが分かりました。

漢方的な働きは、補気健脾(ほきけんぴ)や補肝益腎(ほかんえきじん)があるとされ、胃腸や肝腎(西洋医学の肝と腎とは異なる)の働きを高め、ウイルスや細菌などと戦うために必要な力を補う働きがあります。

こんな方にオススメ!
✅ちょっとしたことで風邪を引く
✅すぐ疲れる、体力の低下が気になる
✅普段から食欲がない
✅板藍根を服用するとお腹を下す

最後に

病気を未然に防ぐことを得意とする「中医学」と、
病気が発症してから治療を行う「西洋医学」。
それぞれに強みと役割があり、どちらも私たちの健康にとって欠かせない存在です。

あなたの体質に合わせた漢方薬や生活養生を通して、コロナ・インフルエンザ・風邪などに負けない“ブレない体”を育てていきましょう。

「今年こそ、風邪をひかない冬にしたい」
「なるべく薬に頼らず、自然な形で体調を整えたい」
そんな想いがありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐

口臭と漢方薬

はじめに

「あれ?もしかして自分の口、臭ってる…?」
ふとした瞬間に気になる“口の臭い”。

人と話す前に手で口を覆ってチェックしたり、マスクで口元を隠したり、会話中も「大丈夫かな?」と相手の反応を伺ってしまう…
そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。

実際に口臭に悩まれている方の多くは
✅歯磨きや舌掃除
✅ガム/タブレット
など、基本的な口腔ケアをしっかり行っているにもかかわらず、
「なかなか改善しない」「一時的に良くなってもすぐに臭ってきてしまう」
というお悩みを抱えていらっしゃいます。

中医学では、こうした口臭の原因を「口の中だけの問題」とは考えません。
実は、体内で発生した「熱」が原因となって、口臭として現れるケースが多いです。

漢方薬は、表面的な対処ではなく、「熱の」原因を根本からアプローチできるのが強みです。
他人の目を気にせず、もっと自信を持って笑顔になれる毎日を、漢方と一緒に目指してみませんか?

口臭の原因

口臭の原因は①生理的原因と②病的原因、そして③飲食物や嗜好品による外因的要因の3つに分類されます。

中医学で考える口臭

上記でも述べたように中医学では、臭いの原因を体内で発生した「熱」によるものと考え主に以下の3つ分類されます。

1.胃熱(いねつ)

中医学における「胃」の働きは、現代医学の機能と近い部分があり、主に以下のような機能を担っています。

①受納(じゅのう):飲食物を受け入れる

②腐熟(ふじゅく):飲食物を消化しやすい状態にする

③降濁(こうだく):消化した飲食物を小腸へ降ろす

「胃熱」とは、胃の働きが過剰になり、まるでエンジンが“オーバーヒート”している状態。
この状態では、①~③のの働きが活発となり、食べても食べてもどんどん空腹感を感じるようになります。その結果、胃の処理(腐熟)能力を超え、飲食物がうまく処理されず悪臭を漂わせるようになります。
まさにゴミ収集車に回収されず残ったゴミが悪臭を放つイメージです。

<主な特徴>
✅食べてもすぐ空腹になる
✅冷たい飲み物を好む、口・喉が渇く
✅便秘
✅舌全体が紅い

「胃」の熱を清ます漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:黄連解毒湯、三黄瀉心湯、半夏瀉心湯など

💡胃熱の主な原因とは
🔺食生活の問題
→脂っこいもの、甘いもの、味の濃いものやアルコールの過食過飲は、「胃」に熱を溜め込みます。

🔺ストレスの影響
→精神的なストレスを受けると、自律神経を主る「肝」の働きが乱れます。
この「肝」が隣接する「胃」に影響を及ぼすと、「胃」の働きが過剰になり「胃熱」の状態へと変化していきます。
ストレスを感じたり、生理前(PMS)になるとつい過食してしまう方は、、「肝」の不調から「胃熱」に至っているケースが考えられます。

2.湿熱(しつねつ)

本来であれば体外へ排出されるべき、ドロドロとした余分な老廃物——
中医学ではこれを「痰湿(たんしつ)」と呼びます。

この「痰湿」が対何に長く停滞すると、次第に熱を帯び「湿熱」という状態へに変化していきます。
「胃熱」と同様、胃内に蓄積された飲食物が腐敗し蒸されることで口臭の原因となります。

<主な特徴>
✅口が粘る
✅暑がりで汗っかき
✅胸焼けがする、胃酸が逆流する
✅舌に苔がべっとりついてる

口臭の原因でる「湿熱」を除去する漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:星火温胆湯、黄連解毒湯、瀉火利湿顆粒など

❗ 舌掃除では根本解決にならない…?
口臭対策のひとつとして「舌の掃除」をされる方も多いと思います。

もちろん一時的な口臭の軽減にはなりますが、そもそも舌に苔がつく理由は、体内に停滞した「痰湿」や「湿熱」が原因です。

つまり、体の中に原因である「痰湿」や「湿熱」が存在する限り、どれだけ舌を掃除しても苔は生まれてしまうということです。
根本的な改善のためには、舌苔を“取り除く”のではなく、“できにくい体質”に整えることが大切です。

3.虚熱(きょねつ)

「虚熱」とは、体を冷やすために必要な“潤い”が不足することで、相対的に熱が発生している状態をいいます。
口の中には「唾液」、胃の中には「胃液」という潤いがあり、これらには
🔸食べ物の消化を促す
🔸食べかすや汚れを洗い流し口内を清潔に保つ
🔸食べ物の消化や栄養の吸収を促す
なのどの重要な働きがあります。

したがって、口内や胃内の潤いが減ってしまうと、未消化の飲食物が残りやすくなったり、体内の冷却水の減少から発生した「虚熱」が口内にこもり口臭の原因となります。

<主な特徴>
✅ドライマウス
✅空腹感はあるが食欲はない
✅胃の灼熱痛、痞え
✅舌の苔が少ない

身体に潤いを補う漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:甘露飲、竹葉石膏湯、麦門冬湯など

最後に

ここまで紹介してきたように、口臭は体質や普段の食生活と密接に関わっています。

もし口臭が気になる方は、まずは和食中心のヘルシーな食事を心がけながら、下記のような“体にやさしい食材”を積極的に取り入れてみましょう。

💡タイプ別おすすめ食材

🔸胃熱・湿熱タイプ
・野菜:苦瓜、きゅうり、チンゲンサイ、ゴボウ
・お肉:豚肉
・果実:スイカ、キウイフルーツ、バナナ
・その他:緑茶、お蕎麦、海藻類

🔸虚熱タイプ
・野菜:レンコン、ゆり根、大根、トマト
・お肉:豚肉
・果実:梨、ブドウ、マスカット
・その他:豆乳、蜂蜜、白キクラゲ

🧠 実は「におっていない」ことも?

口臭のお悩みの中には、実際には全く臭いがしていないのに「自分の口が臭っている気がする」と思い込んでいる場合(自臭症)もあります。
この場合は、「熱」による問題ではなく「こころ=精神面」へのアプローチが必要となります。

漢方薬や日々の養生を通じて、「においを気にせず笑顔で過ごせる時間」を一緒に取り戻していきましょう。

においのお悩みがある方は、どうぞお気軽にご相談ください。

薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐

耳鳴りと漢方薬

はじめに

耳はその複雑な構造から治療が非常に難しいと言われています。

特に「耳鳴り」は、原因がはっきりとしないケースも多く、日本人全体の10~15%が悩んでいるとされ、特に65歳以上に限ると約30%に耳鳴りを抱えているとも言われています。

薬局では、よくビタミン剤(メコバラミン:ビタミンB12)や血行改善薬(カリジゲノナーゼ、アデノシン三リン酸)を試してみたものの、「思ったような効果がなかった」という声を耳にします。

・年齢のせいか聴力が落ち、「ジー」という音が気になり始めた
・ストレスや疲れがピークに達すると「キーン」と高い音がする
・耳が塞がったような感じがして音がしっかり聞き取れない、「ゴー」と重い音がする

このように、耳鳴りの“音の質”や“きっかけ”は人によってさまざま。
まずはカウンセリングを通して自身の体質を知ることが症状改善の近道かもしれません。

📚耳鳴りの分類

耳鳴りは大きく分けて2つに分類されます。

1.自覚的耳鳴:周囲に音がないのに耳の中で「キーン」や「ピー」など本人しか聞こえない耳鳴り
2.他覚的耳鳴:耳の中で音が鳴り、外にも聞こえることがある耳鳴り

参考:病気がみえる(耳鼻咽喉科)

中医学で考える耳鳴り

中医学では、耳鳴りを耳の病変として捉えるのではなく、身体全体(特に五臓の肝、脾、腎)や気血水(津液)のバランスが影響していると考えます。

参考:病気がみえる(耳鼻咽喉科)

1.肝タイプ

📕中医学の古典には次のような記述があります。
「木(肝)鬱之発・・・甚則耳鳴、眩転」
(鬱を発し・・・、甚だしい時は耳鳴し、眩暈する)

ストレスを強く感じたり、憂鬱や怒りなどの精神的な負荷がかかると自律神経を司る「肝」が我慢の限界を迎えオーバーヒートを起こし、その熱は頭部へと上昇します。

さらに「肝胆」の経絡は、耳をまとう形で分布しているため「肝」により発生した熱は頭部の中でも特に耳に伝わります。

たとえば、怒りがこみ上げたときに顔や耳が赤くなるのを経験したことはありませんか?
それはまさに、肝火が頭部に上がった状態です。このような背景から起こる耳鳴りを「肝タイプ」です。

<主な特徴>
✅「キーン」と高い耳鳴り
✅感情の変化で症状が悪化する
✅頭痛、めまい
✅赤ら顔、目が赤い

「肝」のオーバーヒートを抑える漢方薬や「肝気」の流れを良くする漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:竜胆瀉肝湯、加味逍遙散、 柴胡加竜骨牡蛎湯など

2.脾胃タイプ

中医学では、頭部を「清陽の府」といい、全身の陽気(栄養素)が集まる場所とされています。
「脾胃(ひい)」は、現代医学の胃腸に近い役割をしており、食べたものから身体の基礎となる「気」や「血」を作り出し、頭部へ運ぶ働きをしています。
ところが、「脾胃」が弱ると、十分な栄養やエネルギーが頭まで届かなくなり、耳や脳の機能が低下して耳鳴りや立ちくらみといった症状が現れます。

<主な特徴>
✅疲れると耳鳴りがする
✅よく立ち眩みをする
✅食欲がない、疲れやすい
✅下痢、軟便気味

「脾胃」の働きを高め、「気・血」を上部へ運ぶ漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:補中益気湯

3.腎タイプ

📘中医学の古典には次のような記述があります。

「髄海不足、則脳転耳鳴」
(髄海不足すれば、則ち脳転がり耳鳴りす)

「察耳之枯潤、知腎之強弱」
(耳の枯潤を察て、腎の強弱を知る)

中医学での「腎」は、「髄(骨)」を生み出し、その「髄」が集まることで脳を形成すると考えます。脳に「髄」が十分に満たされていれば、脳は正常に働き、耳の機能を維持することができます。

しかし、加齢とともに「腎精」が不足すると「髄」が空っぽになり耳の働きが弱まります。
また、中医学では「腎は耳に開竅する」という言葉もあり、「腎」と「耳」は切ってもきれない関係にあります。

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<主な特徴>
✅「ジー」という蝉の音のような低い音が続く
✅物忘れを頻繁に起こす
✅足腰がだるい、腰が痛い
✅頻尿、夜トイレで起きることが多い

不足した「腎精」を補う漢方薬や「腎」の働きを高める漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:六味地黄丸、滋腎通耳湯、亀鹿仙など

4.その他

①水溜まりタイプ
📙中医学の古典には次のような記述があります。
「痰火上昇、鬱於耳中為耳鳴」
(痰火が上昇して、耳中に鬱滞すると耳鳴する)

たとえば、風邪を引いた時にネバネバした痰が出たり、詰まることがありますよね?
このタイプの耳鳴りは、まさに体内に滞った「痰」が耳や頭に影響を与えている状態です。

<主な特徴>
✅耳が塞がったような感じがする
✅頭が重い、めまいがする
✅胃や胸がムカムカする
✅口が苦い、粘る

「痰」の原因である余分な水分や老廃物を除去する漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:星火温胆湯、竹茹温胆湯、半夏白朮天麻湯など

💡「脾胃」との深い関係
中医学では「脾は生痰の源」といわれ、「脾胃」の働きが弱ると水液代謝がうまく機能せず、「痰湿(たんしつ)」といわれる余分な水が生じやすくなります。
そのため、「脾胃タイプ」と「痰湿タイプ」は併発することが多く、その場合は「痰」を取り除きながら「脾胃」の働きを高める漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:健胃顆粒(香砂六君子湯)、半夏白朮天麻湯など

 ②血の滞りタイプ
中医学における「血」は、身体に栄養を届け、臓腑の働きを支える重要な物質とされています。特に頭部は、脳内血管や脳内血流という言葉があるように、多くの「血」が流れています。
血の巡りが悪い「瘀血(おけつ)」の状態だと、脳疾患(脳梗塞や脳血栓)を引き起こす原因になったり、耳の働きを低下させ耳鳴りの症状へとつながります。

📕中医学の古典には次のような記述があります。
「耳孔内の小管が脳に通じており、管内に血があれば管は閉塞され、耳聾する」(通竅活血湯より)

これは、耳と脳が細い通路でつながっており、そこに血の滞りが生じると音が聞こえづらくなり、耳鳴りや難聴につながるという考え方です。
つまり、血の流れをスムーズに保つことが、耳の健康維持にも直結します。

漢方薬の例:冠元顆粒、血府逐瘀丸、田七人参など

最後に

「耳鳴りや難聴は治らないもの」「年齢のせいだからしょうがない」「上手く付き合っていくしかない」と諦めている方も多いと思います。

病院では「この症状にはこの薬!」と病名治療が行われ、なぜその症状が発生したのか、背景にどんな体質や生活習慣があるのかにまで目が向けられることは少ない傾向にあります。

一方、中医学では、「なぜその症状が出ているのか」を丁寧に探り、一人ひとり異なる体質や生活環境に合わせて対応することを大切にしています。

お客様のお話をじっくり伺いながら、耳鳴り・難聴に付随する症状(メンタルや睡眠状態も耳鳴りや難聴に関係しているといわれています。)に合わせて漢方薬をご提案させていただきます。
耳鳴りや難聴のことでお悩みがありましたら、「仕方ない」と諦めず、ぜひ一度ご相談ください。

薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐

ダイエットと漢方薬

はじめに

誰でも一度は「ダイエット」のことで悩んだことがあるのではないでしょうか?

・健康や美容のためにダイエットをしようかな
・ダイエット⇔リバウンドを繰り返してしまう
・色々な○○ダイエットを試したけど、思うような効果が得られなかった
・今年こそは痩せる!が口癖になっている

巷では、簡単!すぐに痩せられる!と謳い様々な〇〇ダイエット法がありふれてますが、体質や体のバランスを無視した方法では、十分な効果が得られないばかりか、逆に体調を崩してしまうこともあります。

無理な食事制限や過度な運動により、たしかに体重は減ったけれど、疲れやすくなったり、便秘・貧血・肌荒れなどの不調が出てしまったという声も少なくありません。

中医ダイエットとは?

「中医ダイエット」とは、中医学の理論に基づくダイエット方法です。
単に体重を減らすことを目的とするのではなく、「太りやすい体質」の原因を考え、身体で起きている細かな不調を整えながら、健康的に「痩せやすい体質」へと導くことを目標にしています。

体質を改善しながら進めるため、肥満の解消や体重を落とすことと同時に肩こりや頭痛、疲れやすい、浮腫みなどの身近な不調を改善できるのが魅力の一つです。
中医ダイエットで自身の体質を理解しながら、無理のないダイエットで身体の中から”痩せる”身体づくりを目指しませんか?

中医学で考えるダイエット

中医学では、太りやすくなる体質や肥満になる原因として下記の4つのタイプに分けて考えます。

1.🪫脾胃虚弱(ひいきょじゃく)

「脾胃」は現代医学で言う「胃腸」に相当します。
私たちが食事から得た栄養をもとに、生命活動に必要なエネルギー(気)や、血液・体液のもとになる「血」や「津液(しんえき)」を生成する重要な働きを担っています。

「脾胃虚弱」の状態では、胃腸機能の低下により下記の状態へと陥りやすくなり、太りやすい体質へと繋がります。

🔍 脾胃虚弱によって起こる主な問題
1.気や血を作り出すことができない
→ 基礎代謝の低下、疲れやすい、やる気の低下

2.水分代謝が機能せず、体内に余分な水分が溜まる
→ 浮腫、下痢や軟便

<主な特徴>
✅疲れやすい、やる気がでない
✅食欲不振
✅汗をかきやすい、風邪を引きやすい
✅下痢・軟便気味
✅身体が重い

「脾胃」の働きを高めながら、「気」を補う漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:健胃顆粒(香砂六君子湯)、健脾散(参苓白朮散)、防己黄耆湯など

2.🗑️痰湿/湿熱内蘊(たんしつ/しつねつないうん) 
本来代謝・排泄されるべきドロドロとした余分な老廃物を中医学では「痰湿」と呼び、この「痰湿」が長期的に体内にとどまると、次第に“熱”を帯び「湿熱」という状態へと変化します。

🌱 痰湿・湿熱が溜まる背景とは?
「痰湿」や「湿熱」は食生活と深い関係があり、肥甘厚味(肥:脂っこい物、甘:甘い物、厚:味の濃い物)の多い食事を摂り過ぎると、胃腸に負担がかかり身体に余分な老廃物が蓄積されやすくなります。

<主な特徴>
✅悪心、胸やけ
✅下痢・軟便気味
✅身体が重い、浮腫む
✅肥甘厚味の過食、アルコールの多飲
✅肌が荒れやすい
✅口が苦い、粘つく

余分な水分や老廃物を除去する漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:星火温胆湯、胃苓湯、茵蔯五苓散など

食べ過ぎや夜遅い食事が習慣になっている方は、食べ物を消化を促す「晶三仙(山査子、麦芽、神曲)」を併用するとより効果的です。

🔁 脾胃虚弱タイプとの関係性
「脾胃虚弱」の体質がベースにある方は、飲食物の消化吸収や水分代謝の機能が低下しているため、老廃物である「痰湿」や「湿熱」が溜め込みやすい傾向んいあります。また、中医学では「脾は湿を嫌う」という言葉があり、「湿」が溜まることで「脾」の機能が低下し、さらに「湿」が発生しやすくなります。

3.🌀肝気鬱結(かんきうっけつ)
 中医学における「肝」は自律神経全般を主ると考えられており、全身の「気」や「血」の流れを調節しているとともに精神面の安定にも関与していると考えらています。

通常、「肝」が正常に機能している場合では、精神的な負荷に対して一定の耐性があり、受け流すことができますが、ストレス負荷が強い場合や長期間ストレスを受けている場合は、自身の「肝」の閾値を超えてしまい自律神経のバランスが大きく乱れへます。
このような状態を中医学では「肝鬱」と呼び、発散することのできないストレスが鬱々と蓄積し、「気」や「血」の滞り(気滞、瘀血)を引き起こします。

<主な特徴>
✅イライラしやすい
✅脇腹や胸が張る
✅ストレスが原因で食べ過ぎる
✅PMS(月経前症候群)がある
✅月経不順
✅下痢と便秘を繰り返す

「肝」の働きを整え、「気」の巡りを良くする漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:逍遥顆粒、開気丸、大柴胡湯など

「気」の巡りが良くなると基礎代謝も上がるため、上記症状の改善とともに体重の減少へとつながります。

4.🩸瘀血(おけつ)
 「瘀血」とは、血の巡りが悪くなり、血液がドロドロとした状態を指します。このドロドロとした血液には、中性脂肪やコレステロールが含まれており、体内に「瘀血」が蓄積されると内臓脂肪や皮下脂肪がつきやすくなるため、メタボ体系のような肥満の身体へとつながります。

🌊 川の流れにたとえる「瘀血」の原因

瘀血の形成にはいくつかの原因が複雑に関与しており、これを川の流れに例えると以下のように説明できます:

①痰湿や湿熱:川に土砂やゴミが溜まり、水の流れが阻害される状態
②肝気鬱結(気滞):岩が多く、水の流れがせき止めらている状態
③気血不足:水の流れに勢いがなく、石や土砂が溜まりやすい状態
④冷え:川の水が凍り、流れが悪い状態

このように、「瘀血」の改善には単に巡りを良くするだけではなく、その流れを妨げている根本原因にもアプローチする必要があります。

<主な特徴>
✅肌くすみやシミ、そばかすが気になる
✅肩こりや首こり、頭痛が酷い
✅月経不順
✅生理痛がある(出血時にレバー状の塊が出る)
✅舌裏の血管が太く怒張している

漢方薬の例:冠元顆粒、血府逐瘀丸、田七人参など

5.その他(防風通聖散)
ダイエットの漢方薬として非常に有名な「防風通聖散」。
その高い有効性と速効性から肥満症に使われることが多いですが、そもそもはダイエットの目的の薬ではなく、カゼを引いたときに使用する漢方薬です。

🔍 防風通聖散の主な働き

✔体表の邪気を汗とともに発散させる
→カゼ症状(悪寒、発熱、頭痛など)の軽減

✔体内にこもった熱を便や尿とともに出す
→口渇、便秘、尿黄短少の改善

⚠️ 注意すべき体質
無理やり発汗させ、身体(特に胃腸)を冷やし便通や排尿を促すため、気が不足しているタイプや脾胃虚弱タイプ、冷え体質の方は向いていない漢方薬となります。

最後に

中国では、昔から「養生七分、治三分」という言葉があり、健康で暮らす上では日々の養生(生活習慣)が何よりも重要と考えます。
逆に言えば、効果のあるお薬を飲んだところで養生を疎かにしていたら、一向に症状は良くならないということです。(一時的に症状が改善しても、すぐに再燃する方が多いのは、養生の影響かもしれません。)

太る一番の原因は、”食事の内容”とよく言われますが、太りにくい体質を作るには、食事内容の見直しに加え、脾胃(胃腸)に負担をかけず、身体内に老廃物を溜めないような習慣が重要になります。
また、漢方薬を吸収する臓腑は脾胃のため、胃腸の状態を健康に保つことは、漢方薬の吸収を高めることにもがつなります。

📝 毎日の生活に取り入れたい習慣

✅食事の比率は「穀類4~5割、野菜4割、動物性食品1~2割」を目安に
→穀類:米、小麦、大豆など / 野菜:葉物野菜を中心に旬のもの / 動物性の食品:肉、魚介類、卵、乳製品など

✅腹八分を心掛ける(胃がもたれない・苦しくならない、身体が重くだるくならない、眠くならない程度の食事)

✅一口30回を目安に噛む

✅生のもの、冷たい飲食物を控える

✅脂っこい物、甘い物、味の濃い物を控える

✅20時以降に食事をしない

当店では、漢方相談に加えて、薬局併設の施設にて運動機器を用いたフィジカルサポートも行っております。

漢方薬による体質改善と、適切な運動・ストレッチを組み合わせることで、ダイエットはもちろん、病気になりにくい「健康な身体づくり」をトータルでサポートいたします。

ご興味がある方は、ぜひ当店までご連絡ください。

薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐


 

紫外線・日焼けと漢方薬

はじめに

梅雨が明けて夏の陽射しが強まる季節、気になってくるのが「日焼け」や「くすみ」など、肌への紫外線ダメージではないでしょうか。
特に近年の日本は、まるで亜熱帯のような猛暑が続き、紫外線の強さも年々増してるように感じます。

紫外線対策として日焼け止めを使う方が多いと思いますが、
「塗り直しが面倒…」
「肌荒れや乾燥が気になる…」
そんなお悩みを抱えている方も少なくありません。

日焼け止めのデメリットを補いつつ、内面から紫外線を守る「中医式 紫外線対策」で日焼けやくすみの対策をしてみませんか?

紫外線について

日光(紫外線)を浴びることは、骨密度や免疫力の維持、体内時計のリセットなどのメリットがある一方で、紫外線を浴びすぎると肌の日焼けやシミ、たるみの原因となります。

☀️紫外線には種類がある
紫外線にはUV-A、UV-B、UV-Cがありますが、地上に届くのは主に「UV-A」「UV-B」の2種類です。

◆UV-A:シワ、タルミの原因となる
波長の長いUV-Aは、肌のより深く(真皮)まで侵入し、皮膚を構成するコラーゲンやエラスチンなどにダメージを与えます。このダメージが蓄積されると、肌は弾力を失いシワやタルミを引き起こす原因となります。また、日差しを浴びた後にすぐ黒くなるのはUV-Aの影響といわれています。

◆UV-B:シミ、ソバカスの原因となる
UV-BはUV-Aより波長が短いため肌の奥深くには届きませんが、その分ダメージが強く、肌の炎症を引き起こすため、肌が赤くなったり、メラニン色素が沈着してシミやソバカスの原因になります。

日焼け止めのPA、SPFって?

◆PA:Protection Grade of UVA
UV-Aを防ぐ指標。「+」「++」「+++」「++++」の4段階で表示され、「+」の数が多いほど、UV-Aに対する防止効果が高いです。
 
◆SPF:Sun Protection Factor
UV-Bを防ぐ指標。1~50(50を超える場合は50+)で表示され、数値が高いほど、UV-Bに対する防止効果が高いです。

中医学で考える紫外線対策

1.💧補陰=潤いを補う
 夏の強い日差しや紫外線を浴びると、お肌はたっぷりの水分を失ってしまいます。イメージとしては、まるで干物のお魚のように…中がカラカラに乾いていると、ちょっとした熱でもすぐに焦げてしまう状態です。

スキンケアで保湿クリームを使っている方も多いと思いますが、これはあくまで肌の表面を守るものです。実は、クリームに含まれる成分の多くは皮膚の奥深くまで届かないため、本当の意味での「潤い補給」にはなりにくいです。

中医学には、「体の内側から潤いを補う=補陰」という考え方があります。
紫外線の対策には、外から守るケア+内から潤すケアの両方があるとベストです。

<潤いを補う漢方薬の例>
艶麗丹(哈士蟆油含有製剤)、亀鹿仙、婦宝当帰膠など

2.💪補気=バリアを作る
 「気」とは、体を守るエネルギー源のようなもの。
この「気」が不足していると、肌の表面にあるバリア(汗腺や毛穴をコントロールする働き=腠理〔そうり〕)がゆるみやすくなり、体内の水分が逃げやすくなります。その結果、日焼けしやすく、乾燥しやすいお肌になってしまいます。

<「気」が不足しているサイン>

✅風邪を引きやすい
✅汗をかきやすい
✅疲れやすい
✅すぐ息がきれる など

<「補気」に役立つ漢方薬の例>
西洋人参、衛益顆粒、補中益気湯など

3.🩸活血=血流を良くする
せっかく体の中に「潤い(陰血)」や「エネルギー(気)」を補っても、それをお肌までしっかり届ける血流が悪ければ意味がありません。
お肌に栄養が行き渡らないと、皮膚の新陳代謝や再生が低下し、健康でみずみずしく美しい状態に維持することが難しくなります。
また、中医学ではシミやクスミ、そばかすは血の滞りが原因と考えられているため、血流を整えることが美肌への近道となります。

<血流を良くする漢方薬>
紅棘沙(ホンサージ)、冠元顆粒、水快宝など

🌿棘沙(サージ)って?
中国では「美容の果実」「ビタミンの宝庫」とも呼ばれ、お肌の修復や美白、エイジングケアにうれしい栄養がぎっしり詰まった果実です。
✔ ビタミンE:皮膚や粘膜の修復、抗酸化作用
✔ ビタミンA:シワの改善や肌のハリUP
✔ ビタミンC:メラニン生成を抑え、シミ予防にも◎

最後に

中医学では「皮膚は内臓の鏡」とされており、お肌の状態は身体内部のバランスを映し出すものと考えられています。
いくら高価な日焼け止めやスキンケア商品を使っていても、身体内部の状態が良くなければ健康で綺麗なお肌を維持することは困難です。
漢方薬をはじめ、生活習慣や食事内容を見直しながら、お一人おひとり内面のをケアするお手伝いを出来たらと思います。

紫外線対策はもちろんのこと、皮膚の乾燥・痒み・シミ・くすみなどでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
中医学の視点から、あなたにとって最適な「内側からの美容ケア」をご提案させていただきます。

薬剤師 / 国際中医専門員  中目 健祐

高血圧と漢方薬

はじめに

高血圧は、別名「サイレントキラー」とも呼ばれ、血圧が高い状態のままでいると、脳卒中や心筋梗塞、腎不全など重大な合併症を引き起こす可能性が高くなります。
実際に日本人の死因で上位を占める「心疾患(第2位)」「脳血管疾患(第4位)は高血圧と関連があり、血管に大きな負荷をかけないことが非常に重要になります。

中医学には、病気の発症や病状が悪化する前に未然に防ぐ「未病先防(みびょうせんぼう)」という考え方があります。
高血圧を診断された段階では、まだはっきりとした症状を感じないことも多いですが、この“未病”の時点でしっかりと対処していくことで、将来的な合併症のリスクを抑えることができます。

血圧の基礎知識

血圧とは?
血圧とは、心臓から送り出された血流が血管(動脈)の内壁を押す力(圧力)を指し、心臓から拍出される血液量(心拍出量)と末梢血管での血液の流れにくさ(末梢血管抵抗)により決まります。

血圧の「上」と「下」って?
血圧を測定すると「上が130で下が80」といった数値が表示されますが、そもそも「上」と「下」の違いは何でしょうか?

・上=収縮期血圧(最高血圧)
心臓が収縮して血液を全身に送り出すときの血圧

・下=拡張期血圧(最低血圧)
心臓がポンプするために血液をためて膨らんでいる(拡張している)時の血圧

高血圧の診断基準
日本高血圧学会の「ガイドライン2019」によると、病院などの医療機関で測定した血圧(診察室血圧)では「収縮期血圧は140mmHg、拡張期血圧は90mmHg」以上を高血圧としています。
家庭で測定した「家庭血圧」は医療機関での測定より低い数値が出る傾向にあるため、それぞれ5mmHgを引いた数値となります。

また、降圧目標は下記のように設定されています。

中医学で考える高血圧

1.瘀血阻絡(おけつそらく)

「瘀血」とは、血管に溜まった汚れや血液がドロドロした血の巡りを悪い状態を指します。
一般的に血管というと、動脈や静脈といった太い血管をイメージされますが、太い血管は全体の1%程度で、その他は太さ6μm程の目に見えない毛細血管が99%を占めています。
この毛細血管の血液の流れが悪いと、血管の抵抗性が高まり血圧の上昇へとつながります。また、血液の流れが悪いことで心臓が血液を流そうと頑張ってポンプするため血圧が高くなります。

<🩸瘀血タイプの特徴>

✅頭痛・めまいがある
✅首や肩のこりがある
✅手足の静脈が浮き出ている
✅生理痛がある、生理に塊が混じる
✅舌裏の血管が青紫色に怒張している

血の巡りを良くする漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:冠元顆粒、血府逐瘀丸、田七人参など

2.湿熱内停(しつねつないてい)

血の巡りを悪くする原因は「瘀血」だけではありません。
中医学では、体に溜まった不要な水分や老廃物を「「痰湿」といい、この「痰湿」が体内に長く停滞すると、やがて熱を帯びて「湿熱」という状態へと変化します。

「湿熱」が血管内に溜まると、まるでヘドロで詰まった水道管のように、血管の流れが悪くなり、血圧が上がる原因となります。

<🗑️湿熱タイプの特徴>

✅脂っこいもの、味の濃いもの、お酒が好き
✅ぽっちゃり体型(メタボ体型)
✅身体が重だるい、胃がむかむかする
✅口が苦い、臭い、粘る
✅舌に苔がべっとりついてる

老廃物である「痰湿」や「湿熱」を解消する漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:星火温胆湯、瀉火利湿顆粒(竜胆瀉肝湯)、黄連解毒湯など

3.肝陽上亢(かんようじょうこう)

「肝陽上亢」とは、体内の潤い(陰血)が減り、熱(陽気)が相対的に強まっている状態をいいます。

イメージとしては、やかんでお湯を沸かすときの状態。
水がたっぷりあるとバランスが取れてゆっくり沸きますが、水が少ないとすぐに煮え立って湯気が噴き出しますよね。
この”水”が少なく、湯気(熱)が上に昇るような状態がまさに「肝陽上亢」です。

<♨️肝陽上亢タイプの特徴>

✅のぼせて顔が赤くなる
✅頭痛、めまい、耳鳴りがする
✅足腰がだるい
✅寝汗をかく

上部へ上昇した「陽」を抑える漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:釣藤散、降圧丸など

また、上記に合わせてやかんの水の部分(中医学では「陰」といいます。)を補給するような漢方薬を使用するとより効果的です。
漢方薬の例:双料杞菊顆粒(杞菊地黄丸)、瀉火補腎丸(知柏地黄丸)、亀鹿仙など

4.その他:沙棘(サージ)製品

上記で述べたように、血圧が上がる原因の一つとして血管壁の弾性がなくなり血管が硬くなることで起きる場合があります。
このような時に血管を柔らかくしたり、微小循環の改善や抗酸化作用のある沙棘(サージ)製品を使用すると血圧が下がる場合があります。

最後に

漢方薬は、西洋薬のようにすぐに血圧をガクッと下げるものではありません。
しかし、中医学の大きな強みは「未病先防」——つまり、症状が本格的に現れる前の段階から体を整え、病気の予防や悪化の防止に役立てることができる点にあります。
自身の体質を理解し、漢方薬で病気になりにくい体を作りませんか。
血圧や血流に関するお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐

汗と漢方薬

はじめに

汗には、体内の不要な老廃物や毒素の排出(デトックス)、体温調節、皮膚の保湿など大切な役割があります。

しかし…
☑少し動いただけで汗がダラダラ
☑更年期に入り汗が気になる
☑寝汗が酷く、パジャマやシーツがびっしょり
☑手や足、脇の汗・臭いが気になる
☑緊張すると汗が止まらない
など、日常生活に支障が出るような”不快な汗”に悩んでいる方も多いと思います。

「病院に行くほどではないけど…」「他人にも相談しにくいし…」
そんな方へ、中医学の視点から汗の原因について考えたいと思います。

中医学で考える汗💦

中医学では次の5つのタイプで汗の異常を考えます。

1.🫁肺気不足(はいきふそく)
中医学における「肺」には、呼吸系の働き以外に体表にある汗腺の開閉をコントロールする役割を担っています。
そのため、「肺」の力が弱っている方は、汗腺(中医学では「腠理:そうり」)が緩んだ状態であるため、少しの動きで汗が漏れ出たり、邪気が入りやすく風邪を引きやすくなります。 

🔍 こんな方に多い

✅活動後に汗が出やすくなる
✅風邪を引きやすい、冷気(冷房)を嫌がる
✅疲れやすい
✅すぐ息が切れる

「肺」の働きを高める漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:衛益顆粒(玉屛風散)、補中益気湯など

2.⚖️営衛不和(えいえいふわ)

「営衛不和」とは、「営気(えいき)」と「衛気(えき)」のバランスが崩れた状態をいいます。
🟡営気:「津液(水)」を「血」に作り変え、体に栄養や潤いを届ける
🟡衛気:皮膚の表面を守るバリアのような気で、汗腺の開閉もコントロール

この2つのバランスが崩れると、「衛気」が「営気」をとどめておくことができず、汗として外に出てしまいます。

🔍 こんな方に多い

✅発汗後、風に当たるとゾクゾクと嫌な感じがする
✅半身や局所的に汗がでる
✅カゼの様な症状を伴う(軽い発熱、悪寒、だるい)

「営衛」のバランスを整える漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:桂枝湯、桂枝加竜骨牡蛎湯など

3.🔥陰虚火旺(いんきょかおう)

中医学では「心」は火(陽)に、「腎」は水(陰)に属し体内の温度調節を行っていると考えられています。

「陰虚火旺」の状態では、体内を冷却する「水(陰)」が不足することで、相対的に「心」の力が増すため、「火(陽)」の亢進が起こり汗をかきやすくなります。

🔍 こんな方に多い

✅寝汗をかく
✅手足がほてる、微熱がある
✅口が渇く
✅便秘気味

冷却水(腎陰)を増やし、火を鎮める漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:瀉火補腎丸(知柏地黄丸)、六味地黄丸など

4.♨️湿熱鬱蒸(しつねつうつじょう)

本来代謝・排泄されるべきドロドロとした余分な老廃物を中医学では「痰湿」と呼び、この「痰湿」が長く停滞すると、やがて熱を帯び「湿熱」という状態へと変化します。
まるで、生ゴミが腐って熱を持つように、体内で熱を帯びた「湿熱」は汗となって噴き出します。

🔍 こんな方に多い

✅蒸すように汗が出る
✅口が苦い、臭い、粘る
✅舌に苔がべっとりついてる
✅脂っこい物、甘い物、味の濃い物やお酒が好き

余分な水分や老廃物を除去するとともに熱を清ます漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:瀉火利湿顆粒、茵蔯五苓散など

5.肝気鬱結(かんきうっけつ)

「大事な場面で汗が噴き出して止まらない…」
そんな経験はありませんか?😓

中医学における「肝」は自律神経全般を主ると考えられており、全身の「気」の流れを調節し、精神面の安定に関与していると考えらています。
過度なストレスなどにより「肝」の働きが乱れると「気」の流れが滞り、「肝気鬱結」という状態になります。

🔍 こんな方に多い

✅精神的な負荷がかかった場面で汗が出る
✅普段からストレスを感じやすい
✅情緒が不安定になりやすい

「肝」の働き正常化し気の流れを良くする漢方薬を使用すると効果的です。
漢方薬の例:加味逍遥散、柴胡加竜骨牡蛎湯など

⚠️大量の発汗=健康とは限らない?

一般的に汗を大量にかくこと=デトックスだと考えられ、サウナやホットヨガなど不自然に大量の汗をかくことがブームになっていますが、これらは万人に合うものではありません。

特に「1.肺気不足」「2.営衛不和」「3.陰虚火旺」のタイプには、無理な発汗はオススメできません。

中医学では「汗(津)血同源:かん(しん)けつどうげん」という言葉があり、汗(津液≒水)と「血」は同じ源からできていると考えます。
つまり、汗を大量にかくことは、体内の水分量の減少だけでなく、血の消耗も意味し、血液の循環に関わる心臓への負担も大きくなります。このことから「汗は心の涙」ともいわれています。

サウナで「心が整う」感覚も、ひょっとしたら暑さに耐えた達成感からくるものであり、実際には「心はもうやめてくれー!」と悲鳴を上げているかもしれません。

最後に

汗が出てしまう原因や体質は人それぞれです。
不快な汗の原因を中医学的に見極め、体質に合う漢方薬と食養生で整えていきましょう。

「つらいけど、どうしたらいいかわからない」
そんな時こそ、お気軽にご相談ください😊

薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐

下痢と漢方薬

日本人は胃腸が弱い!?

日本人は胃腸が弱い」と耳にすることはありませんか?
実際、多くの方が下痢や軟便、食欲不振などの胃腸トラブルに悩んでいます。
では、なぜ日本人はこのような症状を起こしやすいのでしょうか?

本題に入る前に、中医学的な視点からから紐解いてみましょう。

🌿 中医学の基本「天人合一(てんじんごういつ)」とは?

中医学には「天人合一:てんじんごういつ」という考えがあります。
これは、「人の体は自然と切り離せず、環境の影響を受けながら生きている」という考えで、自然界の変化(気候や湿度など)は、体の中にも影響を及ぼします。

日本の風土は“湿”が多い
日本は、海に囲まれた島国で雨が多く、特に梅雨から夏の終わりまでの数ヶ月間は高温多湿の環境が続きます。さらに、一年を通して湿度の高い日が多いのが特徴です。

また、日本人の食生活の特徴として、生物(刺身や生肉など)や冷水(暑さや寒さに関わらず、飲食店ではお冷がでますよね。)を好む人種でもあります。
こうした環境や食生活から、「天人合一」の考え方を踏まえる、日本人は他の人種に比べて身体内に「湿気(湿)」を溜め込みやすいと考えられます。

「脾胃(ひい)」と「湿」の関係

さて、中医学における胃腸(脾胃)の働きをみてみましょう。

「脾胃:ひい」の働きに1つ「運化」というものがあります。
運化の「運」は運送や輸送、「化」は消化吸収を意味しており、運化には2つの働きがあります。

1.精微物質の運化:気・血・津液(水)を作り、全身に届ける
2.水液の運化:水液を吸収して全身に輸送・散布する

水はけの悪いグランドだと、足が取られ体の動きが悪くなるように、エネルギーや水を運ぶ脾には「湿を嫌う」という特徴があります。

よって、「湿」が体内にあると「脾胃」の働きが低下してしまい…

1.精微物質の運化の失調:エネルギーを作り出すことができない
→ 疲れやすい、やる気がでない

2.水液の運化の失調:水液代謝が機能しない
→ 下痢や軟便、浮腫

という状態に陥りやすくなります。

上記の「天人合一」で述べたように、日本人は気候や食生活から「脾胃」が嫌う「湿」を溜めやすく、作りやすい環境下にいます。そのため、気付かない間に「脾胃」に負担がかかっており、徐々に胃腸が弱っていくことで下痢や軟便、腹部膨満感などの胃腸のトラブルが起こしやすい身体になっていきます。

💡中医学で考える下痢

中医学では下痢のことを泄瀉 (せっしゃ)と呼び、下記の5つタイプに分けて考えます。

1.外感泄瀉(がいかんせっしゃ)
~風邪やウイルスが原因の急な下痢~

カゼのように「外から邪気(悪い影響)」が体に侵入し、「脾胃」に影響を及ぼすことで起こります。いわゆる“胃腸風邪”のような症状です。

【「邪気」や「風邪」って何?】という方はこちらのブログも参考になります👇
カゼと漢方薬 – 日々の生活に漢方を

カゼ(外感表証)に加えて、「寒」や「熱」の邪が体内に侵入し、脾胃の働きを妨げることで下痢が起こるタイプです。そのため、 カゼ症状(表証)を和らげつつ、体内に侵入した“湿”をさばく(取り除く) 漢方薬を用います。

<🤧外感表証(カゼの症状)の主な症状>
✅悪寒
✅発熱
✅頭痛 など

このカゼ症状に加えて、以下のように「寒湿タイプ」「湿熱タイプ」に分かれる下痢の症状が現れます。

<❄️寒湿タイプ>
✅下痢(水様便、臭いが少ない)
✅腹痛、お腹が張る
✅お腹がゴロゴロとなる
✅食欲不振
漢方薬の例:勝湿顆粒(藿香正気散)、香蘇散、胃苓湯など

<🔥湿熱タイプ>
✅下痢(悪臭が強い、便器にこびりつく、急に激しい下痢)
✅肛門の灼熱感
✅口の渇き
✅尿の色が濃い
漢方薬の例:葛根黄芩黄連湯、黄連解毒湯、五行草(馬歯莧)など

⚠️ 外感表証がない場合でも…
カゼ症状が見られない場合でも、急性の下痢であれば「寒湿」か「湿熱」かを見極め、それぞれに適した漢方薬を使用することが大切です。

2.食傷泄瀉 (しょくしょうせっしゃ)
~食べ過ぎ・飲み過ぎにより生じる下痢~

脂っこいものや味の濃いもの、お酒のとりすぎなどで「脾胃」に負担がかかることで起こります。

<🍶主な特徴>
✅便に未消化物が混じり悪臭がする
✅悪心・嘔吐がする
✅胃がもたれる
✅腐臭のあるゲップをする
「脾胃」に溜まっている食積の消化を促すような漢方薬を使うと良いでしょう。
漢方薬の例:晶三仙(山査子、麦芽、神曲)など

3.肝鬱泄瀉 (かんうつせっしゃ)
~ストレスや緊張でお腹を下すタイプ~

緊張する場面(テストや面接、プレゼンの前など)やちょっとした不安(電車に乗った時や学校、会社に行く前)でお腹を下したことはないでしょうか?

中医学では自律神経を主る「肝」の気が高ぶることで「脾胃」が攻撃され、その影響により引き起こされると考えます。

<主な特徴>
✅下痢(精神が緊張状態の時)
✅ストレスを抱えやすい、緊張に弱い
✅脇腹が張る、お腹が張る
✅ゲップをする
「肝」の気の流れを良くしながら、脾胃を守る漢方薬を使うと良いでしょう。
漢方薬の例:逍遥顆粒(逍遥散)、四逆散、柴苓湯など

4.気虚泄瀉 (脾胃虚弱)(ききょせっしゃ(ひいきょじゃく))
~胃腸がもともと弱い体質タイプ~

「幼少期から胃腸のトラブルが多い」
「食後すぐに下痢をする」
「お腹を下すから脂物は食べない」など
一般的に胃腸が弱いと言われる方に多いタイプです。

「脾胃」の働きが低下すると水液代謝が低下するため、腸で吸収されなかった水分が便と混じることで下痢を引き起こします。

【脾胃」の詳しい解説は👇】
五臓六腑:脾胃の働き – 日々の生活に漢方を

<主な特徴>
✅下痢、軟便、便秘と様々なタイプに変化する
✅便中に未消化物が混じる
✅食後にお腹が張る、眠くなる
✅疲れやすい、やる気がでない
✅食べても太れない(痩せやすい)

「脾胃」の働きを補いながら、下痢の原因である「湿」をさばく(水分代謝を改善する)漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:健脾散(参苓白朮散)、健胃顆粒(香砂六君子湯)など

5.陽虚泄瀉 (ようきょせっしゃ)
一般的に胃腸が働きやすい温度は、人間の体温(36~37℃)に近い温度と言われており、お腹が常に冷えてる方や慢性的に冷えが強い方は胃腸の機能が低下しやすくなります。

特に高齢の方や生まれつき虚弱体質の方は、全身の臓腑を温める「腎陽」の働きが低下していることが多く、その結果「脾」を温めることができないため、胃腸機能の低下することがあります。

<主な特徴>
✅下痢、水様便(特に明け方に下痢をすることが多い)
✅便に未消化物が混じる
✅手足や腰、お腹の冷え
✅足腰がだるい
✅排尿困難・浮腫み

「腎陽」を補いつつ、「脾」を温めながら働きを建て直す漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:人参湯+真武湯、参馬補腎丸など

最後に

中国の古典には「無湿不成瀉:湿がなければ下痢はない」という言葉があります。つまり、「湿」を体内に溜めないことが下痢を防ぐカギとなります。

<「湿💦」を溜めやすい+「胃腸」に負担をかける食事>
🟡甘い物(チョコレート、菓子パン、コンビニスイーツ)

🟡脂物(お肉、揚げ物、ポテトチップス)

🟡乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)

🟡冷たい飲食物(ジュース、お酒、刺身、アイスクリーム)

巷では身体に良いと言われているものが、実は胃腸に負担をかけていることもあります。身体に良いものを積極的に摂るよりも、自身の生活を見直し、身体に不要なものを1つ1つ取り除く方が症状改善の近道かもしれません。

体質に合う漢方薬と食養生を通し症状を改善しませんか?
ご興味がある方は、いつでも当店にご相談ください。

薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐

五月病と漢方薬

はじめに

新年度が始まり1ヶ月。4月から進学や就職、昇給などで環境が変わった方は、心や体に疲れが出やすい時期ではないでしょうか。
「ゴールデンウイークは心と体をしっかり休めて、連休明けからまた頑張ろう!」と思っても、学校や職場のことを考えると、「何だかやる気がでない」「眠れない」「食欲が湧かない」など、そんな“なんとなく不調”を感じている方、ひょっとしたら五月病かもしれません。
とは言え、病院に行くほどでもないし、精神安定剤や睡眠薬を使うことに少し抵抗があるという方も多いと思います。

実は「こころ」の不調も、体質のバランスが影響しています。
自身の体質を知ることが、不調から抜け出す第一歩。中医学の視点を取り入れて、自分を見つめ直してみませんか?

五月病の主な症状

五月病の主な症状として身体的、精神的、行動的症状の3つに分類されます。

また、五月病になりやすい人の特徴として次のような性格が挙げられます。
🟡真面目で几帳面、優等生タイプ
🟡完璧主義
🟡周囲への気を遣いすぎる
🟡我慢強く、無理をしがち

中医学で考える五月病

◆イライラ・モヤモヤ型👉肝気鬱結(かんきうっけつ)
✅気分が優れない
✅何だかイライラする
✅ため息がでちゃう など

このようなタイプは、中医学では「肝気鬱結(かんきうっけつ)」タイプといいます。

中医学における「肝」は、「疏泄(そせつ)」という働きを担っており、全身の気の流れをコントロールしています。この「疏泄」機能は、現代医学の「自律神経」の働きに近く、ストレスや憤りを強く感じたり、憂鬱な状態など精神的な負荷がかかると肝の「疏泄」機能が失調し、「気」の巡りが停滞します。この状態を「肝気鬱結」といいます。

⚠️このタイプに多い症状
✅神経質で細かいことが気になる
✅情緒が不安定になりやすい
✅PMSが酷い(胸や脇腹が張る、頭痛、過食気味になるなど)
✅月経不順

イライラ・モヤモヤ型には、「肝」の働きを改善させ「気」の流れを良くする漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:加味逍遥散、柴胡疏肝湯、四逆散など

⚠️「肝」は他にも…
「肝」は他の臓腑にも影響を及ぼし様々な症状の原因にもなります。
例えば、自律神経の乱れが「脾胃(胃腸)」にまで影響を及ぶと、精神的な刺激により下痢や腹痛を起こすことがあります。
また、胃腸の働きの低下から「痰湿(余分な水分)」が作られ、それが喉を塞ぎ「※梅核気」という症状を引き起こすことがあります。
※梅核気:炎症や異物がないのに、喉が詰まったような感じがする症状。中医学では、その症状が喉に梅の種(核)が詰まった感じと考え「梅核気」と呼んでます。

◆くよくよ型👉心脾両虚(しんぴりょうきょ)
✅仕事や学校での失敗を引きずりやすい
✅嫌なことを考えるとやる気がでない、不安感が増す
✅寝る前にあれこれ考えてしまい寝れない など
このようなタイプは、中医学では「心の血」が不足し、「脾」の働きが低下している「心脾両虚(しんぴりょうきょ)」の状態といいます。

🩸心血虚(しんけっきょ)
中医学における「心」は、一般的な心臓の機能である循環器系のポンプの働きに加え、精神的な働きである「こころ」としての役割も担っています。
特に「こころ」の状態と睡眠はダイレクトに関係していると考えられ、普段の生活で考え事をしていたり、悩み事がある時は、中々眠れないことがありますが、これも「心=こころ」の弱りが原因にあります。

🪫脾気虚(ひききょ)
脾は現代医学で言う胃腸を指しており、私たちが普段から摂っている食事や飲み物から栄養素(気や血)を生み出し各臓腑へと運ぶ働きがあります。
そのため、「脾」の働きが低下している「脾気虚」の状態だと、気(エネルギー)や血(栄養)が生み出されないので、疲れやすくなったり、気力ややる気の低下へとつながります。「ご飯を食べると元気になる!」「人間の体は食べたもので出来ている!」とよく言われますが、「胃腸」の働きを理解すると、この言葉はあながち間違いではありません。

<主な特徴>
✅動悸がする
✅眠りが浅い、夢を多く見る
✅食欲がない
✅食後すぐ眠くなる
✅下痢、軟便気味

くよくよ型のタイプには、「心」の血を補い、「脾」を立て直す漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:心脾顆粒(帰脾湯)、人参養栄湯など

◆ヘトヘト・くたくた型👉肝気虚(かんききょ)

✅もともと疲れやすい
✅ストレスや緊張に弱い
✅周りの目を気にしちゃう 

などのタイプでありながら、みんなに必死に追いつこうと無理をしてしまう頑張り屋さんは、中医学では「肝気虚(かんききょ)」タイプといいます。

「肝」の「疏泄(≒自律神経)」が問題なく機能している場合は、精神的な負荷がかかっても一定の耐性があり、受け流すことができますが、「疏泄」の働きが低下している「肝気虚」タイプは、少しの精神的な負荷で自律神経のバランスを大きく乱れてしまいます。

<主な特徴>
✅ストレスや緊張する場面が嫌い
✅嫌なことから逃げがち
✅休みの日だと身体が軽く元気で活動的

「肝」の気を補う漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:シベリア人参、逍遥顆粒+補中益気湯など

最後に

中医学には「心身一如(しんしんいちにょ)」という言葉があり、”心”と”身体”は切り離せないものと考えられています。「気持ちの問題だから」と我慢するのではなく、体の内側からバランスを整えてみましょう。

「何となくつらい」「前のように頑張れない」など、五月病や心の不調でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐

五臓六腑:腎の働き / 補腎のすすめ

はじめに

最も重要なことを「肝心要(かんじんかなめ)」と言いますが、この「肝心」は本来「肝腎」と書いていたそうです。
中医学における「腎」は、現代医学の「腎臓」の働きに加え、成長や発育、老化、免疫など幅広い役割を担っており、「腎」の働きの充実さが、その人の身体全体の健康と深く関わります。そのため、「腎」の働きが弱ると、発育が遅れたり、不妊症や更年期障害、骨粗鬆症、脱毛など様々な不調や老化現象の原因にも…。このことからも、「腎」は、まさしく人間の「要(かなめ)」の臓器と言えます。
「腎」の働きを補い、高める「補腎(ほじん)」。西洋医学にはない、中医学特有の「腎」の考えと「補腎」の魅力を少しでもお伝えできればと思います。

古来から伝わる人体のリズム

中国では、古くから「女性は7の倍数、男性は8の倍数」で身体の変化があると言われています。女性は28歳、男性は32歳で腎が最も充実して身体や生殖機能がピークを迎え、その後は徐々に腎の働きが弱くなり、様々な不調や老化現象が現れやすくなります。

■女性は7の倍数で変化する

■男性は8の倍数で変化する

「腎」の働き

 ①精を蔵する

「精(せい)」とは、人間の生命力の源であり、生命活動を維持する基本物質と考えらています。「腎精(じんせい)」は、生まれたときに両親から受け継いだ「先天の精(せんてんのせい)」と、日々の飲食物から得られる「後天の精(こうてんのせい)」の2つから作られます。

それぞれの働きについて

①生長・発育、生殖に関係する

「腎精」は生長・発育の基本物質であり、人間の一生をあらわす”生(生まれる)・長(成長する)・壮(盛りを迎える)・老(老いる)”と深い関係にあります。
そのため、「腎精」が不足すると、発育不良や老化に伴う症状が出やすくなります。
また、「腎精」は生殖器官の発達と生殖能力にも関係しているため、生理の不調や不妊、精力の減退にもつながります。

②髄を生みだし、骨や脳を栄養し管理する

「腎精」は髄(脳髄、脊髄、骨髄)を作り出します。
髄は骨を形成し、髄が集まって脳を形成し、また、骨髄とも関係があることから血液の生成にも関係します。高齢になるほど、骨がもろくなったり、記憶力が低下するのは、年齢を重ねるごとに「腎精」が減っていくためです。

③水と関係する

現代医学の「腎臓」の役割に近く、水分の代謝と排泄に関わり、身体の水分をコントロールしています。この働きが弱くなると、尿量の増えたり、減ったり、むくみの症状が生じやすくなります。

④気を納める

中医学には「肺は気の主、腎は気の根」という言葉があり、呼吸機能は主に「肺」が二枚ますが、息を深く吸い込むには「腎」の働きが必要になります。
呼吸が浅く、動くとすぐ呼吸困難になる方は、「腎」の力が低下している可能性があります

「腎」と五行の関係

⑤腎は耳及び二陰と関係がある

耳は「腎精」により養われることで、正常な聴覚が保たれます。老化の症状により耳が遠くなったり、耳鳴りがするのは、年齢とともに「腎精」が減ることが原因です。
また、二陰とは前陰(尿道や生殖器)、後陰(肛門)のことを指し、「腎」が弱ることで尿や便の不調、生殖系のトラブルが起こりやすくなります。

⑥腎の華は髪にある

美しい花を咲かせるためには、まず根がどっしり張っており、土からしっかり栄養分を吸収し、花に届ける必要があります。中医学では、この「根」にあたるのが「腎」、そして吸い上げられる「栄養分」が「精(せい)」です。「腎」がしっかりしていて、「精」がたっぷりと蓄えられていれば、髪は栄養を受けて、いつまでも若々しく、元気に保たれます。髪の健康は、腎の充実度を映す鏡とも言えるのです。

⑦腎と関係がある季節は冬である

動物たちが冬眠をして活動を控え、エネルギーを蓄えるように、年齢とともに自然に衰えていく「腎」は、冬に無駄な消耗を避け、しっかりと養う必要があります。
冬の時期に無理をしたり、過労や睡眠不足が続いたり、身体が冷えたりすると「腎」の働きは衰えやすくなります。

「補腎」とは?

先述のように「腎」は、私たちの生命活動において非常に重要な働きを担っています。「腎精」、燃えているロウソクのようなもので、加齢や過労などで少しずつ減っていき、新たに増やすことはできません。
また、その蝋(「腎精」)から立ちのぼる炎が「腎気」であり、蝋が減れば炎も小さくなってしまいます。つまり、「腎気」も年齢を重ねるごとに弱くなっていきます。

蝋そのものは増やすことはできませんが、蝋に油を足すことで、消費を抑えることはできます。この油を足す行為が「補腎」にあたり、「補腎」をすることで「腎」の衰えによる老化現象(更年期障害、物忘れ、耳が遠くなるなど)を予防・緩和したり、生殖機能の向上にもつながるため、妊活のサポートとしても有効とされています。

補腎薬について

「腎」には「腎陰(じんいん)」と「腎陽(じんよう)」が存在します。
💧腎陰:身体を潤し、冷ます役割
🔥腎陽:身体を動かし、温める役割

温泉に例えると、温泉の水源である地下水が「腎陰」、熱の根源であるマグマが「腎陽」に相当します。心地良い湯加減になるには、水と熱のバランスがとえれていなければなりませんが、中医学でも「腎陰」と「腎陽」のバランスを保つことが重要になります。
💧腎陰を補う漢方薬の例
→六味地黄丸、杞菊地黄丸、瀉火補腎丸(知柏地黄丸)など
🔥腎陽を補う漢方薬の例
→八味地黄丸、参茸補血丸、参馬補腎丸など

最後に

これまでお伝えしてきたように、「人生」を健康で豊かに過ごすには、「腎精」が豊富に充実していることが非常に重要になります。つまり、”人生”とは「腎精」そのものとも言えます。

以下のような症状に心当たりはありませんか?

✅足腰が痛い、だるい
✅若い頃に比べ疲れやすくなった 
✅頻尿・尿漏れが気になる
✅耳が遠くなった 
✅肌のシミ・シワが増えた 
✅更年期障害 
✅生理不順、不妊 
✅精力低下 など
これらは、もしかすると「腎」の働きが弱くなってきているサインかもしれません。

若々しさを保ち、いつまでも健康に過ごすためには「腎」を労わり、日々の生活の中でその働きを補うことが大切です。

漢方薬局では、植物性より効果が高いと言われている「鹿の角」や「亀板」、「スッポン」などの動物性の生薬が配合された補腎薬を多く取り扱っています。
⚠️動物性生薬を含む漢方薬は、ほとんどが保険適用外のため、病院では処方できないことが多いです。

お一人おひとりの体質に合わせた「補腎薬」のご提案をしておりますので、気になる方はぜひお気軽にご相談ください。

薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐