「土用」ってなに?

はじめに

今回は、いつもの「〇〇と漢方薬」といったテーマとは少し趣向を変えて、季節にまつわるお話をしてみたいと思います。

「土用の丑の日」と聞くと、「うなぎを食べる日!」というイメージを持つ方が多いのではないでしょうか?でも、そもそも「土用」とは何を意味するのでしょうか🤔

来月末からは、「”夏”の土用」の時期が始まります。
ということは、「夏」以外にも土用があるの!?

今回は、「土用」とは何か、そして土用の時期をどのように過ごすとよいのかを中医学の視点から、そのポイントをお伝えしていきます。

五行と季節の関係

「土用」の話に入る前に、中医学を理解するうえで欠かせない「五行学説」について少し触れておきたいと思います。

五行学説とは、自然界に存在するあらゆるものや現象は「木・火・土・金・水」の5つの要素から成り立っているという、古代中国の哲学的な思想です。

この考え方は中医学にも応用されており、五行を人体のはたらきにあてはめることで、体の構造や機能、病気の原因、治療の方向性などを読み解く手がかりとされています。

五行と季節の関係を見ると、
「春=木、夏=火、秋=金、冬=水」 に対応しています。

では、「土」はどこに当てはまるのか?(長夏とありますが、いまいちピンとこないですよね…。)
この「土」と深く関わるのが、「土用」という季節です。

季節の変わり目と「土用」

一年には春・夏・秋・冬という四つの季節がありますが、もし季節がいきなり春から夏、夏から秋へ…と切り替わったら、体がついていけず、びっくりしてしまいますよね。

こうした季節の変化に体をうまくなじませるために、古くから設けられているのが「土用」という期間です。

土用は、季節と季節の間にある「調整期間」・「中継地」のようなもので、次の季節の変化に対応できるように、心身のバランスを整える大切な時期とされています。

つまり「土用」は、春から夏、夏から秋…といった次の季節へと向かうための“橋渡し役”のような存在です。この時期をどう過ごすかによって、次の季節を元気に迎えられるかどうかが変わってきます。

この季節の変わり目である立春・立夏・立秋・立冬の直前18日間が、それぞれ「土用」の期間とされています。

2025年度の土用

●春の土用:4月17日(木)~5月4日(日) → 立夏:5月5日(月)
●夏の土用:7月19日(土)~8月6日(水) → 立秋:8月7日(木)
●秋の土用:10月20日(月)~11月6日(木) → 立冬:11月7日(金)
●冬の土用:2026年1月17日(土)~2月3日(火) → 立春:2月4日(水)

ところで「丑の日」ってなに?

「丑の日」とは、日にちを十二支で数えた時の「丑」にあたる日のことを指します。
十二支といえば、年賀状などでおなじみですが、本来は日や時刻、方角などを表すためにも使われてきました。
十二支:子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥

2025年の夏土用の「丑の日」は、7月19日(土)7月31日(木)の2回あります!

「土用」は”脾胃(ひい)”をいたわる期間!

上記で述べたように五行学説では、五臓の「脾」は「土」に属します。そのため、「土用」の期間は、「脾」が影響を受けやすくなる期間とされています。

中医学における「脾胃」は、現代医学における胃腸を指し、飲食物の消化や吸収を担っており、私たちの身体に必要な「気(エネルギー)」や「血(栄養)」を作る働きがあります。さらには、水分の調整も行っており、胃腸に余分な水分が溜まらないように、代謝を調整する役割も担っています。

「脾胃」の詳しい働き👉五臓六腑:脾胃の働き – 日々の生活に漢方を

ちょうど「土用」の時期、つまり季節の変わり目は、湿度が急激に変化したり、気温が不安定だったりと環境の変化が大きくなります。こうした変化は、「脾」にとって大きな負担となり、体調を崩す原因になります。

なんで「うなぎ」を食べるの?

さまざまな説がありますが、平賀源内の説を紹介したいと思います。

江戸時代、あるうなぎ屋の店主が、夏場になると旬を過ぎたうなぎの売り上げが落ちることに悩んでいました。そこで、蘭学者としても知られる平賀源内が、「丑の日に“う”のつく食べ物を食べると夏バテしない」という民間の言い伝えをヒントに、「本日 土用丑の日」と書いた張り紙をすすめたところ、これが話題となり、「土用の丑=うなぎ」という習慣が広まったとされています。

💡中医学の視点から見た「うなぎ」

ちなみに、中医学的に「うなぎ」は、「脾」の機能を高め、「気(エネルギー)」や「血(栄養)」を補う働きがあるとされています。

体力の消耗 / 食欲の低下 / だるさや疲れといった「脾胃(胃腸)」の弱りからくる夏の不調をサポートしてくれるため、ただの語呂合わせだけでなく、中医学的にも理にかなった養生法といえます。

💡実は「山椒」にも意味がある!

「山椒」は、お腹を温め、胃腸の働きを高める作用があり、冷たいものの摂りすぎや冷房による“お腹の冷え”が気になる夏にはぴったりの薬味です。
つまり、「うなぎ+山椒」の組み合わせは、夏に弱りやすい「脾胃」を助けるという点でも、非常に理にかなった中医学的な養生スタイルかもしれません。

「脾胃(胃腸)」を守る養生法

①冷たい物を避ける
→冷たい物は「脾胃」を傷つけます。

②肥甘厚味を避ける
→肥:脂っこい物、甘:甘い物、厚:味の濃い物は「脾胃」に負担をかけます。

③腹八分を心掛ける
→胃がもたれない・苦しくならない、身体が重くだるくならない、眠くならない程度の食事が良いとされています

④一口30回を目安に噛む
→食べ過ぎ防止、消化を助けることにつながります。

🍴脾胃(胃腸)」に良い食材

・胃腸の働きを高める:お米、山いも類、豆類(大豆、枝豆など)

・水分代謝を促す:はと麦、キノコ類(しいたけ、えのきたけなど)、海藻類(昆布、わかめなど)

・胃腸を温める:生姜、ねぎ、シナモン

最後に

近年の日本では、気温の急激な変化や、まるで亜熱帯のように長く続く蒸し暑さなど、異常ともいわれる気象が目立ち、四季の移ろいを感じにくくなってきました。
その影響もあり、季節の変わり目に体調を崩す方や、自律神経のバランスを乱す方が増えているように感じます。

だからこそ、季節の変化が目まぐるしい今の時代には、「土用」だけでなく、日頃から胃腸(脾胃)をいたわる暮らしが、健やかに過ごすための大切なポイントなのかもしれませんね。

薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐

起立性調節障害と漢方薬

はじめに

「学校に行きたいのに、行けない」
「どうして朝、体が動かないんだろう…」
「普通の生活がしたいだけなのに」

思春期の子どもたちに多く見られる「起立性調節障害」。
ある調査によると、中学生のおよそ10人に1人が経験すると言われ、不登校の背景にこの症状が関係しているケースも少なくありません。

最近では少しずつ認知されるようになってきましたが、それでもまだ「サボっているだけ」「甘えているんじゃないの?」といった誤解や心ない言葉に傷つく子も多くいます。

病院で検査をしても「異常なし」。薬を飲んでもあまり変化がない。
そんな状況に、どうしたらいいのか分からず、ただ時間が過ぎるのを待つしかない。そんな声もよく耳にします。

中医学(漢方)の視点から、少しでもこの症状に対する理解とサポートの糸口をご紹介できればと思います。

起立性調節障害とは?

💡どんな症状があるの?

起立性調節障害(OD)では、以下のような症状が見られます:

  • 朝、どうしても起きられない
  • 頭が痛い、立ちくらみやめまいがする
  • 体がだるくて、食欲もわかない
  • 時には失神してしまうことも…

このような症状は、
・午前中に強く、午後になると少し楽になる
・立ったり座ったりすると悪化し、横になると楽になる
・気圧の変化(特に雨の前など)にも敏感で、体調を崩しやすい
のも特徴です。

さらに、夜になると目が冴えてなかなか寝つけず、そのような生活が続き、だんだん昼夜が逆転してしまうこともあります。

🤔起立性調節障害の4つのタイプ

💊病院での治療は?

1.薬を使わない治療(非薬物療法)

  • 起きるときは頭を下げて、ゆっくり立ち上がる
  • 立ちっぱなしを避け、1〜2分以上の起立は控える
  • 水分を1.5~2L、塩分は普段+3gを目安に
  • 毎日30分程度のウォーキングで筋力を保つ
  • 早寝早起きで生活リズムを整える

(出典:日本小児心身医学会)

2. 薬を使った治療(薬物療法)

生活習慣の見直しを行ったうえで、必要に応じて血圧上昇作用のあるメトリジン(ミトドリン)やリズミック(アメジニウム)などが使われることがあります。

中医学で考える「起立性調節障害」

中医学では、「起立性調節障害(OD)」の背景に、昇降失調(しょうこうしっちょう)という状態があると考えます。

本来、私たちの体内では――

  • 清気(せいき):エネルギーや栄養は上へと昇り
  • 濁陰(だくいん):不要な水分や老廃物は下へと降りていく

という流れがうまく保たれていることで、心も体も健やかに働いています。

しかし、この上下のバランスが乱れてしまうと、本来届くはずの清気が頭部に行き渡らず、脳が“栄養不足”のような状態に。すると、

  • 頭がぼーっとする
  • めまいや立ちくらみ
  • 朝起きられない
  • 失神してしまうこともある

といった症状が現れます。

この「昇降の流れの乱れ」こそが、中医学で捉える起立性調節障害の根本原因とされています。

1.脾胃虚弱(ひいきょじゃく)

中医学でいう「脾(ひ)」と「胃(い)」は、現代医学でいうところの消化器系。つまり胃腸の働きにあたります。

「脾胃」は、食べたものを消化・吸収し、体に必要なエネルギー(=気)や栄養(=血)を生み出す役割を担っています。さらに、体内の水分代謝を整える働きもあり、「脾胃」がしっかりしていないと、余分な水分が体にたまりやすくなります。

「脾」と「胃」は表裏の関係にあり、お互いに協力しながら働いています:

  • 「脾」は、栄養をしっかり吸収し上へと運ぶ(上昇)
  • 「胃」は、食べ物を受け取り下へ送る(下降)

この“上昇”と“下降”のバランスが崩れる、いわゆる「昇降失調」の状態だと、本来上に届くはずの栄養が頭まで届かず、めまい・ふらつき・朝起きられない・疲れやすいといった「起立性調節障害」のような症状が現れます。

<主な特徴>
✅空腹感を感じない(特に朝)
✅食事量が少なく、すぐお腹いっぱいになる
✅元気がなく疲れやすい など

「脾胃」の働きを整える補中益気湯や黄耆建中湯、半夏白朮天麻湯などが使用されます。また、血虚(栄養不足)の傾向が見られる場合は、「脾胃」の状態を見ながら、婦宝当帰膠や十全大補湯などを使用することもあります。

「脾胃」の詳しい働きは👉五臓六腑:脾胃の働き – 日々の生活に漢方を

2.肝気鬱結(かんきうっけつ)

起立性調節障害の方に多く見られるのが、朝、体が動かない・目覚めてもスイッチが入らないという症状です。これは、医学的には「副交感神経から交感神経への切り替えがうまくいかない」と説明されますが、中医学ではこのような自律神経の調節を「肝(かん)」が担っていると考えます。

精神的なストレスやプレッシャー、不安が続くと、「肝」が我慢の限界を迎え、「気」の滞りを生じます。すると、体や心にさまざまな不調が現れ、この状態を中医学では「肝気鬱結(かんきうっけつ)」と呼びます。

また、「ストレスを抱えると食欲がなくなる」「緊張するとお腹が痛くなる」といったように「肝」と「脾胃」は密接に関係しており、「肝気鬱結」が起きると、「脾胃」の働きも乱れてしまい、
🔼清気を上へ
🔽濁陰を下へ
という本来の昇降の流れも乱れてしまいます。

<主な特徴>
✅精神的ストレスを抱えている
✅緊張に弱い
✅イライラしやすい など

「肝」の働きを整え「気」の流れを良くする逍遥顆粒や四逆散、開気丸などが使用されます。

「肝」の詳しい働きは👉五臓六腑:肝の働きについて – 日々の生活に漢方を

3.痰飲(たんいん)

「痰飲」とは、体の中に停滞した余分な水分を指します。
体内の水分は、「肺」や「脾」、「腎」の働きによって巡回し、必要な分は吸収され、不要なものは尿や汗として排出されますが、「脾胃」が弱っていたり、水分代謝のバランスが崩れると、余分な水が溜まりやすくなり「痰飲」が形成されます。

この「痰飲」があることで、「気」の流れを妨げられ、身体の“通り道”をふさいでしまうため、清気(栄養やエネルギー)が頭部に届かなくなります。

<主な特徴>
✅体が重だるく、すっきりしない
✅頭が重く、時にはめまいがする
✅ 雨の日や湿度の高い日に体調が悪化する など

余分な水分(痰飲)を処理する苓桂朮甘湯や五苓散、温胆湯などが使用されます。

🦉フクロウ体質って?

「フクロウ」は夜に活動し、昼間は眠っている夜行性の鳥ですね。
そんなフクロウのように…

  • 朝はどうしても起きられない
  • 起きても頭がぼーっとして働かない
  • 朝食も食べる気がしない
  • 午前中は全体的にスローペース
  • でも午後になるとだんだん調子が上がってきて
  • 夜になると頭も体も冴えてくる!

そんな特徴を持つ人を、山本巌先生は「フクロウ体質」と表現しました。

このタイプは、上記でも述べたように、「起立性調節障害」によく見られる体質パターンでもあります。夜になると元気になる一方で、朝に弱く、生活リズムが乱れやすい。まさに「体内時計のズレ」が根っこにあるような状態です。
山本巌先生は、このような「フクロウ体質」に、よく”苓桂朮甘湯”という漢方薬を使用していました。

養生

🍭控えたい栄養素

血糖値を急激に上昇させる食品は、できるだけ控えたいものです。
脳はブドウ糖を唯一のエネルギー源としていますが、血糖が急激に上下すると、エネルギーの供給が不安定になり、集中力や気分の安定に影響を及ぼします。

特に以下のような食品は注意が必要です。

  • ケーキやクッキーなどの砂糖たっぷりのお菓子
  • 炭酸飲料や清涼飲料水などのジュース類
  • 白い小麦粉でできたパンやパスタ(菓子パン・白パン・うどん など)

これらは「高GI食品」とも呼ばれ、食後すぐに血糖値を急上昇させます。

すると、体は血糖を下げるために大量のインスリンを分泌しますが、これが効きすぎると血糖が急降下することもあります。この状態を「反応性低血糖」といい、血糖の乱高下は、脳にとって大きなストレスになります。

🧠摂取すべき栄養素

上記で述べたように、脳の唯一のエネルギー源は「ブドウ糖」ですが、それだけでは脳は正常に働きません。
脳の健やかな働きを支えるためには、ブドウ糖に加えて、ミネラル(マグネシウム・亜鉛・鉄など)も欠かせません。

脳は「電気信号」によって情報を伝え合っています。
たとえば、

  • 何かを見たとき
  • 考えたとき
  • 感情が動いたとき

このような瞬間、神経細胞(ニューロン)同士が微細な電気信号を送り合っているのです。この電気信号のやりとりをスムーズに行うためには、ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウムといったミネラル(電解質)が必要不可欠です。

また、鉄は脳へ酸素を運ぶ役割を、亜鉛は記憶や感情に関わる神経伝達物質の合成を助けています。

食材の例
・鉄:黒ゴマ、黒豆、なつめ、ほうれん草
・亜鉛:牡蛎、牛肉、枸杞の実
・カルシウム:小魚、干しエビ、昆布
・マグネシウム:海藻類(昆布、わかめ、ひじき)

最後に

今回ご紹介した3つのタイプ(脾胃虚弱・肝気鬱結・痰飲)は、あくまで中医学的に見た一例にすぎません。
実際には、体温調節が苦手なタイプや、発育や成長過程に起因するタイプなど、さまざまな要因が複雑に絡み合って、現在の症状が現れていることがほとんどです。

「◯◯を飲んだら元気になったらしいから自分も…」
「SNSで話題の漢方がいいと聞いたから試してみよう…」

そんな気持ちもよくわかります。ですが、顔立ちが人それぞれ異なるように、体の内側=体質は十人十色です。同じような症状でも、原因や体質は全く異なるということも珍しくありません。

だからこそ、悩みを抱えている方には、自分自身の体質に合ったケアや漢方薬を見つけていただきたいと思っています。

僕のような存在が、少しでもそのお手伝いができたら何より嬉しいです。
「起立性調節障害」でお悩みがありましたら、お気軽にぜひご相談ください。

薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐

腸活と漢方薬

はじめに

近年、「腸内細菌」「腸管免疫」「腸内フローラ」といった言葉を耳にする機会が増え、スーパーやコンビニエンスストアでも、”ヨーグルト”や”乳酸菌飲料”など腸内環境を意識した製品が多く見られるようになりました。

しかし、これらを取り入れている多くの方が、「何となく健康に良さそう…」という漠然としたイメージで”腸活”を行っているのではないでしょうか?

そこで今回は、「腸」が私たちの健康にどのような役割を果たしているのか、そして中医学の視点から見た「腸活」について、分かりやすくお伝えします。

そもそも「腸」ってどんな役割?

私たちの体は、食べ物を口から取り込み、食道→胃→小腸→大腸の順番に運ばれ、必要な栄養を取り込み、不要なものを最終的に便として排泄しています。
つまり、人間の消化管は口から肛門までつながった一本の”ちくわ”のような構造をしてます。
この中でも、栄養の吸収と不要物の排泄を担っているのが「腸」です。腸は大きく「小腸」と「大腸」に分かれていて、それぞれ次のような働きをしています。

🔶 小腸

①栄養の吸収
胃や十二指腸で消化された食べ物は小腸に送られ、約5~8時間かけてさらに細かく分解されます。ここで、体に必要な水分と栄養の約80%を吸収します。
ちなみに、小腸は体の中で一番長い臓器で、全長は6~7メートルの長さにもなり、さらに内側の粘膜を広げると、テニスコート1面くらいになるとも言われています。

②不要物を大腸へ
必要な栄養素を吸収し、残った不要物(カス)を大腸へ送ります。

🔶大腸

①水分やミネラルの吸収
小腸から送られてきた内容物から、さらに水分やミネラルを吸収し、便としての形を整えていきます。

②便を体の外へ
最終的に、排出された便を体の外に排出します。

💡「腸」の7つの働き

「腸内細菌」って何?

私たちの腸内には、およそ100兆個以上、500〜1000種類もの腸内細菌が住んでおり、総重量はおよそ1kg程度になると言われています。
これらの細菌は、種類ごとにまとまって腸内に分布しており、その様子がまるでお花畑(flora)のように見えることから、「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼ばれています。

腸内細菌は大きく3つのグループに分類されます。

🔴善玉菌:乳酸菌、ビフィズス菌など
<主な働き>
・身体に必要な栄養素を効率よく吸収する
・ビタミン、たんぱく、体内酵素を産生する
・腸内を酸性に近づけ悪玉菌が増殖しにくい環境にする
・腸の蠕動運動が活発になり老廃物をいち早く体外へ排出する
・免疫機能を高める

🟣悪玉菌:大腸菌(毒性株)、ウェルシュ菌、ブドウ球菌など
<主な働き>
・腸内を腐敗させる
・有害物質(毒素や発がん物質)を作り出す
・有害物質が腸管から吸収され、血管を通って全身をめぐる

🟡日和見菌:バクテロイデス、大腸菌(無毒株)、連鎖球菌など
「善玉菌」「悪玉菌」のどちらにも加勢する中立的な菌。
善玉菌が多ければ善い働きをし、悪玉菌が優勢になると一緒になって悪影響を及ぼすため、常に善玉菌を優位に保つことが腸内環境のカギとなります。

腸内細菌の黄金比

食生活の乱れや運動不足、ストレス、老化などで腸内の環境が乱れると、悪玉菌が作り出した有害物質が増えたり、病原菌が臓器に侵入して様々な病気を引き起こす原因となります。

「腸」は人体最大の免疫器官管?

私たちの消化管は、口から肛門までが一本の管のようにつながった構造をしており、食べ物だけでなく、ウイルスや細菌など外界からの異物にも常にさらされています。つまり、「腸」は外部からの刺激を最も受けやすい臓器の一つと言えます。

このような環境から体を守るために、腸には免疫機能が集中しており、全身の約70%の免疫細胞が腸に存在しているとも言われています。まさに腸は、“最大の免疫器官”とも呼べる存在です。

そのため、腸内環境を良好な状態に保つことは、免疫力の維持・強化に直結する大切な要素。腸の調子が整えば、体全体の健康バランスも自然と整いやすくなるります。

中医学で考える「腸活」

腸内環境を整えるためには、善玉菌そのものを摂取する「プロバイオティクス」と、その善玉菌のエサとなって腸内での定着や増殖を助ける「プレバイオティクス」の2つのアプローチが重要とされています。

ただし、腸内にはすでに100兆個以上の細菌が存在しているため、いくら善玉菌(プロバイオティクス)を摂っても、それらが腸内に定着するのは難しいという見解もあります。そのため、より重要とされているのが”腸内の土台を整える「プレバイオティクス」”です。

中医学では、消化吸収の働きは「脾胃(ひい)」が主ると考え、中でも「脾」は、五行のうち“土”に属する臓腑です。栄養豊富な土壌が植物を育てるように、「脾」が健やかであれば、腸内の菌たち(腸内フローラ)も良いバランスで保たれます。

つまり、中医学的に見ると、

  • プロバイオティクス=種(乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌)
  • プレバイオティクス=土(「脾」の働きを整えること)

と捉えることができます。

いくら良い種をまいても、土壌がやせ細っていては芽は出ません。中医学では古くから「脾こそが万物の生みの親」とされており、腸内環境の改善にも「脾」の健やかさが欠かせません。

「脾」の詳しい解説は👉五臓六腑:脾胃の働き – 日々の生活に漢方を

タイプ別の「腸活」

①胃腸の弱り=脾虚たタイプ

✅疲れやすい、やる気が出ない
✅食欲がない
✅食後にお腹が張る、眠くなる
✅下痢・軟便気味

これらのサインは、中医学でいう「脾虚(ひきょ)=脾の弱り」の状態と考えられます。「脾」の働きを補うことで、胃腸の機能を底上げし、腸内フローラが整いやすくなります。
漢方薬の例:健脾散(参苓白朮散)、人参湯、小建中湯など

💡「膠飴(こうい)」が腸を整える!?
小建中湯に含まれる「膠飴(麦芽糖)」は、オリゴ糖の一種で、腸内の善玉菌のエサとなる”プレバイオティクス”としての働きがあります。中医学では、「脾」の働きを高める漢方薬として古くから使われてきましたが、現代の栄養学的観点から見ても、腸内環境を整える作用が期待できる、まさに伝統と科学が重なる”漢方の知恵”の一つといえるでしょう。

②老廃物の停滞=痰湿・湿熱タイプ

✅脂っこい物、甘い物、味の濃い物やお酒が好き
✅口が苦い、臭い、粘る
✅メタボ体型
✅舌に苔がべっとりついてる

このような状態は、中医学では「痰湿(たんしつ)」や「湿熱(しつねつ)」と呼ばれる、体内の老廃物や余分な水分・熱が滞っている状態と捉えられます。

悪玉菌の原因となる老廃物を取り除くことで、腸内環境のバランスも整いやすくなります。
漢方薬の例:平胃散、温胆湯、五行草(馬歯莧)など

💡老廃物が溜まると…

中医学では「脾は湿を嫌う」と言われています。
たとえば、水はけの悪いグランドでは、足が取られ体の動きが悪くなりますよね?「脾」も同じで、体の中に「湿(老廃物)」がたまると「脾」の機能は低下し、腸内環境のバランスが乱れてしまいます。

③暴飲暴食=食積タイプ

✅お腹いっぱいじゃないと満足できない
✅胃がもたれる・げっぷやガスが多い
✅排便してもスッキリしない
✅便やおならのにおいがきつい

このような状態は、中医学では「食積(しょくせき)」と呼ばれ、食べすぎ・飲みすぎによる消化不良が起きている状態です。

「脾胃」の消化容量を超えた食べ物は、胃腸に負担をかけ、「痰湿」や「湿熱」といった老廃物の原因となります。漢方薬の例:晶三仙、加味平胃散など

💡発酵食品の入った漢方!?

晶三仙に含まれている「神曲」は、フスマや大麦などを発酵させた生薬です。発酵食品は、腸内の善玉菌を増やす“プロバイオティクス”としても注目されており、消化を助けながら腸内環境を整えるという、「神曲」には一石二鳥の働きがあります。

最後に

<脾胃を守る養生法😌>

🟡冷たい物を避ける
→冷たい物は脾胃を傷つけます。

🟡肥甘厚味を避ける
→肥:脂っこい物、甘:甘い物、厚:味の濃い物は脾胃に負担をかけます。

🟡腹八分を心掛ける
→胃がもたれない・苦しくならない、身体が重くだるくならない、眠くならない程度の食事が良いとされています。

🟡一口30回を目安に噛む
→食べ過ぎ防止、消化を助けることにつながります。

現代では、「腸活」が一大ブームとなっていますが、中医学では、はるか昔から胃腸=「脾胃」を整えることが健康のカギとされてきました。

乳酸菌や整腸剤などの現代的アプローチも、こうした先人の知恵と組み合わせることで、より理想的な腸=*「栄養豊富でバランスの良い“土壌”」へと近づけるかもしれません。

体質や症状に合わせた中医学的「腸活」にご興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐

目の不調と漢方薬

はじめに

現代では、小さな子から年配の方までスマホやタブレット、パソコンの使用が日常の一部になっています。ある調査によると、日本人が1日に画面を見ている時間は7〜10時間といわれ、1日の1/3は何らかのデジタルデバイスの画面と向き合っている計算になります。

この「長時間の画面接触」が原因で、目の乾き・かすみ・疲れ・視力の低下といった“目の不調”を訴える人が年々増えています。
目のトラブルは単なる疲労だけではなく、頭痛や肩こり、集中力の低下、さらには睡眠の質の悪化など、さまざまな不調を引き起こす引き金にもなります。

「目」の仕組み

・水晶体:角膜を通して張ってきた光を屈折させて網膜に映し出す。
・前房:房水によって角膜や水晶体に酸素や栄養を供給し、眼圧を一定に保って眼球に張りを持たせる。
・硝子体:コラーゲンと水でできたゼリー状の組織。内側から適度な圧力をかけて眼球の形状を保つ。
・網膜:角膜から入ってきた光が像を結ぶ場所。

(「読む目ぐすり」参照)

中医学で考える「目」

中医学では、目は五臓の働きや精気の状態が現れる場所であり、五臓や精気が充実していれば、物がよく見えると考えられています。

<目と五臓の関係:五輪学説>

・肉輪(上下の眼瞼):「脾」は筋肉(肌肉)と関係があることから、眼瞼は「脾」に属します。まぶたがたるむ(眼瞼下垂)や眼瞼の浮腫みは、「脾」が弱っているサインかもしれません。
漢方の例:補中益気湯、五苓散など

・血輪(目頭、目尻):「心」は血液(血脈)と関係があり、眼角の充血には「心」が原因とされることがあります。
漢方薬の例:黄連解毒湯や三黄瀉心湯など

・気輪(結膜):肺は白色と関係があることから、白目の部分(結膜)は「肺」と関係があります。細菌やウイルス、花粉などによる急性結膜炎は、「肺熱(はいねつ)」と呼ばれる状態で、肺に熱がこもっているときに起こりやすいです。
漢方薬の例:銀翹散、越婢加朮湯など

・風輪(角膜):黒目の部分である角膜は「肝」と深く関係しています。中医学では「肝は目に開竅(かいきょう)する」といわれ、目のトラブル=肝の働きと直結すると考えられています。詳しくは下記で説明します。

・水輪(瞳孔):中医学における「腎」は「生命力の源」であることから、加齢や老化とも関係が深いとされます。白内障や緑内障など、加齢による目の症状は「腎」の弱りと結びついて考えられています。
漢方薬の例:杞菊地黄丸、亀鹿仙など

「肝」と「目」は深い関係

上記で述べたように「肝」と「目」には、非常に深い関係があります。
中医学の古い書物には、目は「肝」に属する器官であり、目の機能は「肝」の働きが調和し正常であれば良く見える状態が保たれ、五色を見分けることができると記されています。

1.肝血虚

昔から、貧血の人にはレバーが良いと言われるように、「肝」には「血」を貯蔵する働きがあり、この「血」が十分に貯蔵されていることで「肝」の働きは正常に保たれます。また、中医学には「久しく視れば血を傷る」という言葉もあり、現代のように長時間スマホやPCを見る生活は「肝」の栄養源である「血」を著しく消耗させます。

<主な特徴>
✅目がかすむ、ぼんやり見える
✅目が乾燥する
✅目、瞼が痙攣する

「肝血」を補う漢方薬の例:婦宝当帰膠、心脾顆粒、十全大補湯など

2.肝腎陰虚

中医学には、「肝腎同源(精血同源)」という考えがあり、「肝」が「血」を蓄えて全身の血液量を調節し、「腎」はその「血」のもととなる「精」を生み出します。「肝」と「腎」、そして「精」と「血」は、それぞれが支え合いながらバランスを保ち、私たちの生命活動を支えています。
そのため、目の酷使により「血」が消耗すると、「血」や「生命の根源」である「精」も徐々に枯渇していき、目の不調だけでなく、体力が低下したり、疲れが取れにくくなったりと老化現象のような症状を生じやすくなります。

<主な特徴>
✅ドライアイ、目薬が手ばせない
✅視力が落ちてピントが合わない
✅加齢に伴う目の不調(老眼、緑内障、白内障、加齢黄斑変性症)

「肝腎」を強化し「精血陰液」を補う漢方薬の例:杞菊地黄丸、亀鹿仙、二至丹など

3.瘀血

目の健康を保つには、上記で述べたように「肝」に「血」が豊富にあること、そして「血」が滞ることなくスムーズに目まで行き届けることが重要となります。

「血」の巡りを改善する漢方薬の例:冠元顆粒、血府逐瘀丸、桂枝茯苓丸など

4.目の不調によく使われる生薬

中医学特有の表現に「明目」という言葉があります。字の如く、目を明るくはっきり見せるという意味で、目の機能を高め、疲れやかすみを改善することを指します。

<代表的な生薬>
🟡菊花(きくか):爽やかな香りから「気」の巡りを良くし、ストレスや目の酷使により高ぶった「肝気」を鎮めます。中国では、目の疲れた時にお茶としてよく飲まれています。」

🟡枸杞子(くこし):スーパーフードの「ゴジベリー」。古来より補腎の生薬として知られ、精を補い視力を改善する働きがあります。漢方薬の杞菊地黄丸にも入ってます。

🟡決明子(けつめいし):目の炎症を抑え良く見えるようになることから「決明」と名付けられました。日本では、よく便通の改善にも使われます。

🟡石決明(せっけつめい):アワビの貝殻の生薬。別名「千眼光」よ呼ばれ、「肝」の高ぶりを抑え、目の酷使による頭痛や飛蚊症などに使われます。

最後に

<質の良い睡眠が目を守る!💤>

中学では、午前1~3時は「肝」が活発に働く時間帯とされています。
この時間にきちんと熟睡できてると、全身の「血」が「肝」に集まり、老廃物を解毒・浄化し、栄養豊富な「血」へと生まれ変わります。

「目が疲れやすい」「視力が落ちてきた」「寝ても疲れが取れない」
そんな方は、寝る前のスマホやタブレットを手放して、質の良い睡眠を意識してみましょう。

「目を使ことが増えた」「最近、見えにくくなってきたかも」
そんな時、中医学の視点で体の内側を見直してみると、良い効果が得られるかもしれません。目のトラブルは、単なる疲労ではなく、「肝」「腎」など五臓からの悲鳴のサインかもしれません。体質に合わせた漢方薬や食事、生活習慣を整えることで、目だけでなく、全身のバランスも整っていきます。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。

薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐

メンタルと漢方薬

はじめに

仕事や人間関係、将来のこと…私たちは日々の生活の中で、多くのストレスやプレッシャー、不安を抱えながら生きています。特に日本人は、感情を表に出すことが苦手であり、自分の気持ちを抑え込むタイプが多く、心のモヤモヤやイライラを上手に発散できない方が多いと言われています。

さらに、この時期は、新社会人や新学期、新生活などの生活環境の変化に加えて、寒暖差が激しく、三寒四温と言われるように暖かい日が続いたと思ったら、急に気温が下がったりと気候面での変化も多く、自律神経が乱れやすい時期です。

「いつもよりイライラする」
「何だか不安感が強い」
「やる気がでない…」 

その行き場のないメンタルのお悩みを、中医学の力で改善してみませんか?

中医学におけるメンタルの考え方

西洋医学ではメンタルの不調を「脳と神経」の問題と考えますが、中医学では「心身一如:しんしんいちにょ」という考えがあり、心と体は切り離せすことができず一体であると捉え、精神と身体は互いに影響していると考えます。そのため、メンタルに不調がある時は、身体にその要因があると考え、体内を整えながら精神を落ち着かせます。

「七情」と「気・臓腑」の関係

人間が持つ基本的な感情を表す言葉として「喜怒哀楽」がありますが、中医学では七つの情緒「怒・喜・思・憂・悲・恐・驚」で考えます。これらの感情は、人間らしく生きるために必要不可欠ですが、精神的刺激が強過ぎたり、長期間続くと「気」や「臓腑」の活動に影響を与え、心身に不調をきたします。

肝:怒則気上(怒れば則ち気が上る)
心:喜則気緩(喜べば則ち気が緩む)
脾:思則気結(思えば則ち気を結ぶ)
肺:悲則気消(悲しめば則ち気が消える)
腎:恐則気下(恐れば則ち気が下りる)/ 驚則気乱(驚けば則ち気が乱れる)

上記の中でも特に「肝・心・脾」への影響が強く、メンタルの不調はそれらの臓腑のバランスを整えることが重要となります。

1.肝タイプ

中医学における「肝」は、現代医学でいう「自律神経」の働きに近く、ストレスや憤りを強く感じたり、憂鬱な状態など精神的な負荷がかかると肝の「疏泄」機能が失調し、気の巡りが停滞します。

「肝ってどんな働きがあるの?」という方はこちらのブログも参考になります👇
五臓六腑:肝の働きについて – 日々の生活に漢方を

<主な特徴>
✅イライラする、怒りっぽい
✅感情の波が激しい
✅ため息が多い
✅脇腹が張る

「肝気」の巡りを良くする漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:逍遥散、四逆散、大柴胡湯など

2.心タイプ

西洋医学では、「脳」が精神を主るとされ、セロトニンやドーパミンなどの脳内の伝達物質が、感情や思考、行動に影響を与えると考えます。
一方、中医学では、「心」が「脳(神明)」を支配していると考え、精神的な働きである「こころ」としての役割を担っています。
また、「心」は、「心」は血(けつ)によって養われる臓であるため、「血」が足りない状態になると、精神的に不安定になりやすく、心が落ち着かず眠りにも影響が出てきます。

<主な特徴>
✅不安感が強い
✅動悸がする
✅物忘れが多い
✅寝付けない、途中で起きる

「心血」を補う漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:心脾顆粒(帰脾湯)、天王補心丹、酸棗仁湯など

3.脾タイプ(脾=胃腸)

「はらわた(腸)煮えくり返る」「腹が立つ」「腹を決める」など、感情を表す言葉には”お腹”にまつわる表現がたくさんあるように、昔の人達は、腸と精神活動には何かしらの関係があると考えていました。

近年では、「脳腸相関」や「腸は第二の脳」という言葉も登場し、腸内環境がメンタルに大きく関与していることが科学的にも明らかになってきました。
実際、腸は「幸福ホルモン」と呼ばれるセロトニンや、「やる気ホルモン」とされるドパミンなどの神経伝達物質を数多く生産しいるとされています。

「脾」タイプは、上記の「肝」や「心」のタイプと結びつくことが多く、以下のような症状が現れやすいことが特徴です。

✅緊張するとお腹が痛くなる、下痢をする、お腹が張るなど
→「気」の巡りを良くしながら「脾胃」の働きを改善すると良いでしょう。
 漢方薬の例:開気丸、逍遥散、四逆散など

✅心配事や不安なことがあると食欲がなくなる、眠れないなど
→「心血」を補いながら「脾胃」を建て直すと良いでしょう。
 漢方薬の例:心脾顆粒、加味帰脾湯、人参養栄湯など

また、日ごろから
✔下痢・軟便が多い
✔食欲がない、食生活が悪い
✔疲れやすい

などの症状がある方は、胃腸の働きを整える健脾散(参茯白朮散)や、消化を助ける晶三仙、腸内環境のバランスをサポートする五行草などを活用して、体の内側からケアしてあげると良いでしょう🌿

4.その他(腎タイプ)

最近では、男性更年期という言葉を耳にする機会も増え、女性だけでなく、ある年齢を境に生じる心身の不調が注目されています。

中医学では、こうした更年期や加齢による不調を老化に関わる「腎」の衰えと考え、「腎」に貯蔵されている「腎精」の減少をいかにゆるかにするかが症状改善のポイントとなります。

このタイプに該当する方は、「腎」の力を補う漢方薬(補腎薬)を中心にメンタルの症状に合わせて漢方薬を併用すると良いでしょう。
補腎薬の例:瓊玉膏、亀鹿仙、海馬補腎丸など

「腎ってどんな働きがあるの?」という方はこちらのブログも参考になります👇
五臓六腑:腎の働き / 補腎のすすめ – 日々の生活に漢方を

最後に

現代人は、誰しもが何らかのストレスや不安を抱えており、精神疲労やうつ状態を生じやすい環境の中で過ごしています。
だからこそ、日常的に発生するストレスを「気のせい」と我慢せず、体のバランスを整えることで心を軽くしていくアプローチが重要です。
中医学の考えや漢方薬をうまく活用して、少しでも「こころ」の負担を軽くできるようなお手伝いができたらと思います。
「自分はどのタイプだろう?」「どの漢方が合っているの?」と迷った方は、お気軽にご相談ください。

薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐


 

五臓六腑:肝の働きについて

はじめに

厳しい寒さもようやく落ち着き、段々と春の訪れを感じる季節になりました。
春の暖かさや桜の開花で心が躍る一方、春は気候(寒暖差、春一番)や環境(新年度、新生活、新学期)の変化が大きく、心身ともに疲弊する方が多い時期でもあります。

中医学では、春は「肝」との関連が深い時期とされ、春に不調が出やすい方は出来るだけ「肝」への負担を減らしてあげることがポイントとなります。春の変化にスムーズに適応できるように中医学における「肝」の働きを理解し、気持ちよく春を迎えましょう。

「肝」の働き

①疏泄(そせつ)を主る

お互いの考えや意見を理解し、気持ちが通じ合うことを意思疏通(疎通)と言いますが、この「疏」には塞がっているものを滞りなく通じさせる、そして「泄」には排泄の言葉から連想されるように何かを押し出す、流すという意味があります。つまり、「疏泄」とは、何かを滞りなくスムーズに流れるということを指し、中医学における“その何か”とは全身の「気」の流れを意味します。

中医学では、人間の身体は「気」「血」「津液」などで構成されていると考え、その中でも「気」は生命活動を支えるエネルギー的な存在であるとともに、情報を伝え身体全体のバランスを整える情報伝達物質でもあります。

・情志を調節する
伝達物質としての「気」は主に「肝」の「疏泄」機能によりコントロールされますが、ストレスや憤りを強く感じたり、憂鬱な状態が続いたりなど精神的な負荷がかかると「疏泄」機能が失調し、「気」の流れが停滞することにより精神活動に影響を及ぼします。

気持ちを落ち着ける時に深呼吸をしたり、嫌なことがある時に溜め息をつくのは、ストレスによって生じた気の滞りを散らすという本能的な反応なのかもしれません。

・消化吸収を促進する
飲食物の消化吸収は「脾胃(胃腸)」で中心的に行われますが、肝の「疏泄」機能は「脾胃」の気の流れも調節しており、胃腸における正常な消化吸収をサポートしています。
普段は何も問題がないのに、プレゼン発表や面接、試験前などある特定の場面になると、食欲が無くなる、下痢をする、お腹が痛むなどを訴える方がいますが、これは肝の「疏泄」機能が失調したことで「気」の流れが停滞し、胃腸の働きをコントロールすることができなくなったことが原因といえます。

・血液運行を維持する / 水液代謝を調節する
中医学には「気は血を行(めぐ)らす」「気は津液を行らす」という言葉がありますが、「気」は内臓や組織・器官などを活発にする働き以外にも、身体中の「血」と「津液(水・潤い)」の循環をスムーズに巡らす働きも担っています。
そのため、「疏泄」機能が低下し「気」の流れが悪くなると、「血」が停滞した「瘀血」の状態や余分な水分が滞った「痰湿」の状態へとつながり、頭痛や肩凝り、生理痛、浮腫みなどが生じやすくなります。

上記のように「疏泄」の働きは、現代医学の脳からの指令(視床下部)や自律神経(交感神経⇆副交感神経)の働きに近いとされ、身体の様々な働きに影響を与えます。

②蔵血(ぞうけつ)を主る

貧血にはお肉のレバーを食べると良いと言われるように、「肝」には「血」を貯蔵する働きがあります。また「肝」は血を貯蔵するだけではなく、血液量の調節も行っており、各組織器官、特に目や筋、爪、子宮(詳細は下記参照)などの組織を養い正常な生理活動を維持する働きがあります。

「肝」と五行の関係

③肝は筋を主り、その華は爪にある
「筋」とは筋肉と骨、関節を連結する組織を指し、現代医学の腱や靭帯、筋膜などの働きに近いといわれています。この「筋」は肝の「血」(肝血)により養れ、もし「肝血」が不足すれば筋には栄養がいかず、こむら返りや瞼が痙攣するなど筋の収縮や弛緩に問題が生じます。
また、中医学では「爪は筋の余り」という言葉があり、爪も筋と同様に「肝血」により養われます。「肝血」が十分にあれば硬く丈夫な爪となりますが、「肝血」が不足すれば爪は柔らかく脆くなり、爪が割れたり、筋が入りやすくなります。

④肝は目に開竅する / 肝の液は涙である
目には多数の血管が通っていることからも分かるように、目を使うことは多くの「血」の消耗へとつながり、その栄養源は「肝」に貯蔵されている「血」となります。中医学の古典にも「肝受血、而能視」とあり、「肝血」が十分にあることで視力が保たれます。目が霞む、眼精疲労、ドライアイなど目の症状でお悩みの方は、もしかしたら「肝血」不足が原因かもしれません。

⑤肝の志は怒
中医学では「怒りは肝を傷る。怒れば則ち気上る。」という言葉があり、怒りやイライラ、強い憤りなどの感情は「肝」に影響を与え、「気」の停滞へとつながります。また、怒った時に頭に血が上るという表現がありますが、激しい怒りによる興奮は「気」を上昇させ、顔が赤くなったり、頭痛を引き起こしたり、目の充血へとつながります。

⑥肝と関係がある季節は春である
「肝」は五行の木の分類に属すことから、その働きをよく植物に例えられます。植物は冬の寒い間、土の中で幹や根に栄養を蓄え、春になり暖かくなると新芽が顔を出し始め、太陽に向かって上へ上へと成長します。この流れは、人間の体内も同様で、冬に蓄えていた「エネルギー:陽気」が春の訪れとともに活溌になり始めます。また、芽を出した植物(木)たちが、のびのびと成長することを好むように、私たちの身体に流れる「気」も停滞することなく、のびやかに流れることで私たち身体全体の活動が安定します。
つまり、「春」と「肝」は「のびのびと成長し、活動的になる」という共通の性質を持ち、「肝」の働きが活溌になりやすい「春」は、上記で述べた「疏泄」機能が失調し「気」の乱れを生じ自律神経のバランスを崩しやすくなります。

最後に

「肝」に負担がかかりやすい春は、心も体も「自由気ままにのびのび過ごす」ことが養生のポイントになります。新年度を迎えるからと何か新しいことを始めよう!と意気込む方もいますが、春に不調を感じやすい方は周囲の流れに惑わされずに、自分のペースを保つことを心掛けてみてください。

<オススメ養生>
①お散歩
「気」の巡りを良くする代表的な漢方に「逍遙散:しょうようさん、加味逍遙散:かみしょうようさん」がありますが、この「逍遥」とは、元々は「気ままに散歩する」という意味があります。気分転換が苦手な方は、心地よい春の陽気を感じながら、自由気ままにのびのびとお散歩してみてください。

②「香味、補血、苦味」の食材を摂る
・香味:春菊、三つ葉、紫蘇、みょうが など
→香りの良い食べ物は「気」を巡らせます。

・補血:なつめ、クコの実、ほうれん草、小松菜、黒ごま など
→「血」を補うことで正常な肝の働きをサポートします。

・苦味:ふきのとう、タラの芽、わらび、たけのこ など
→冬にため込んだ老廃物を排出します。


薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐

 

咳と漢方薬

薬局に薬がない?
〜いま起きている医薬品供給の現実と、漢方薬という選択肢〜

コロナウイルスやインフルエンザ、風邪の大流行により、今まで普通に貰えてたはずの咳止めや去痰薬、抗生物質などのいわゆる風邪薬と言われるお薬が薬局で手に入らないケースが多発しています。

ただ、これは単に風邪の大流行により生じている問題ではありません。今後、他の医薬品でも起きる可能性は十分にあり得ますので、本題に入る前にその問題について最初に触れたいと思います。

医薬品が不足している3つの要因

①製造の問題

事の発端は2020年に発覚した医薬品メーカーの不祥事です。ジェネリックメーカーである「小林化工」が製造した抗真菌薬(イトラコナゾール)に睡眠導入剤(リルマザホン)の成分が混入し、200名以上(そのうち死者2名)に意識消失などの健康被害が発生しました。(詳細は「https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/000919956.pdf」を参照ください。)
この事件を皮切りに他メーカーの製造工程や管理体制などの不正も発覚し、今まで製造していた多くのジェネリック医薬品が市場からなくなり、医薬品の供給不足の状態に陥りました。

②薬価の問題

日本では医薬品の価格(薬価)を国が定めており、定期的な薬価引き下げが行われています。
薬価改定により医薬品の価格が下がることは、私たちの医療費負担が軽減されるためメリットと思われる方も多いと思いますが、製薬会社側からすると利益が減るという問題が生じてしまいます。その結果、昔からあるような咳止めや去痰薬、抗生物質などの薬価の安い医薬品は、原材料や人件費が高騰する中で生産を維持することが難しく製造を縮小・中止してしまいます。

③需要過多の問題

生産量が減少している中でコロナウイルスやインフルエンザ、風邪の大流行がさらに追い討ちをかけ、特定の医薬品の需要が急激に高まったことにより薬局に行っても「適切な薬」が貰えないという状況に陥りました。

いま求められるのは💡

現時点では咳止めや去痰薬を中心に出荷調整となってますが、これから春にかけては花粉症患者が急増するため抗アレルギー薬の出荷調整も予想されます。このような状態の中で私たちが出来ることは、処方箋医薬品に頼るのではなく適切なOTC医薬品や漢方薬を選び使用することではないでしょうか。

病院でよく処方される咳止め

中医学で考える咳

中医学では、咳に限らず病因を「外感(がいかん)」と「内傷(ないしょう)」に分けて考えます。「外感」とはウイルスや細菌、花粉などのような体の外にある原因を指し、「内傷」とはストレスや飲食の不摂生、過労、運動不足などにより引き起こされる臓腑の働きの低下から生じる病態を指します。

「外感」による咳(外感咳嗽)

風邪やアレルギー症状の初期にみられるこのタイプは、大きく4つに分けられます。

1.冷えタイプ❄️

✅寒気がする
✅痰が薄く透明で白っぽい
✅頭痛、鼻づまりがする

体を温めながら寒邪をとばし咳を鎮める漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:小青竜湯、苓甘姜味辛夏仁湯、麻黄湯など

2.熱タイプ🔥

✅寒気より熱が気になる
✅黄色い痰や鼻水が出る
✅喉が痛み、喉が渇く

肺の炎症を抑えるような熱を冷まし咳を落ち着かせる漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:麻杏甘石湯、五虎湯、麻杏止咳顆粒、清肺湯など

3.痰タイプ💦

✅多量の痰がでる
✅胸がつかえる
✅吐き気がする、体が重だるい

痰をさばき咳を鎮める漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:二陳湯、半夏厚朴湯など

4.乾燥タイプ🍂

✅空咳がでる
✅痰が切れにくく少量の痰 / 痰がでない
✅喉が乾燥し、痒みや痛みが伴う

肺に潤いを与える漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:麦門冬湯、竹葉石膏湯、白龍散など

💡漢方薬も選択肢に!

病院の咳止めが手に入らない…。
薬局に行っても「入荷まで時間がかかる」と言われた…。
あるいは「忙しくて病院に行く時間がない」——そんなときこそ、漢方薬を選択肢に加えてみませんか?
咳のタイプに合う漢方薬を使用することで、非常に良い効果を得られることがあります。

「内傷」による咳(内傷咳嗽)

・風邪を引いた後に咳だけ残っている
・痰が絡んだ咳が頻繁にでる
・空咳が止まらない
・ストレスがかかる場面で咳き込んでしまう
など、原因が分からず咳が続いてしまうこのタイプは、上記で述べた「外感」による咳症状とは異なり、西洋薬を服用しても一時的には効果を得られるものの、根本の原因に対しての解決には至っていないため、薬の効果が切れると再び咳が出てしまいます。

呼吸は主に「肺」で行われますが、中医学では「肺」だけでなく「脾」や「腎」、「肝」などの臓腑も密接に関係しています。

1.呼吸力の低下(肺気虚:はいききょ)

中医学における「肺」は、 「宣発粛降:せんぱつしゅくこう」という働きを通し、息を吐くことで人体に必要な気や津液などの栄養を全身に送り出し(宣発)、息を吸うことで栄養を取り込み体内の奥深く(腎)まで届ける(粛降)働きをしています。この働きにより肺機能は維持され正常な呼吸へとつながります。

このタイプの特徴は
・力のない咳が続く
・息切れがする
・汗をよくかく、風邪をひきやすい

「肺」の働きを高め「肺気」を補う漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:麦味参、衛益顆粒、補中益気湯など

2.空咳が続く(肺陰虚:はいいんきょ)

中医学では「肺」は「潤いを好み、乾燥を嫌う」臓器といわれています。
正常な肺は多少の刺激や異物であれば簡単に受け流すことができますが、潤いを失った肺は少しの違和感でも刺激と感じ、体を守るための防御反応から空咳という症状へとつながります。

このタイプの特徴は
・空咳が続く
・口や喉が乾燥する
・痰に血が混じる

「肺」に潤いを与えるような漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:滋陰降火湯、滋陰至宝湯、瓊玉膏など

3.痰が絡む(脾虚痰湿:ひきょたんしつ)

中医学には「脾は生痰の源となし、肺は貯痰の器となす」という言葉があります。
飲食物の消化・吸収に関わる脾胃(胃腸)は、よく土に例えられますが、良質な土壌は水捌けが良く作物がすくすくと育ちますが、少しの雨でも水溜りがたくさんできてしまうような悪質な土壌では、なかなか作物は大きく成長しません。この水溜りが体内の余分な水分であり、中医学で言う「痰湿」にあたります。脾胃の状態が悪いと痰湿が作られ、それが肺へ届けられると痰が絡むという症状へとつながります。

このタイプの特徴は
・痰がよく出る
・食欲がなく、疲れやす
・下痢/軟便気味だ

「脾胃」の働きを立て直し「痰湿」を取り除く漢方薬を使用すると良いでしょう。(水捌けの良い土壌を作る漢方薬)
漢方薬の例:健胃顆粒、健脾散など

4.加齢による咳(腎不納気:じんふのうき)

一般的に呼吸は「肺」だけの活動と思われていますが、中医学では「肺は呼気を主り、腎は納気を主る」と言われ、息を吐く力は「肺」に依存しますが、しっかり深く吸い込むには「肺」だけでなく「腎」のパワーも必要となります。
呼吸が浅く、咳き込んでいるおじいちゃんやおばあちゃんをよく目にすると思いますが、これは老化に関わる「腎」の働きが年齢とともに低下し、息を吸い込む力(納気)が落ちてしまったことによります。

このタイプの特徴は
・ある時を境に咳が増えた
・呼吸が浅い
・息切れ

「腎」の納気作用を高め「肺」の働きを助ける漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:八仙丸、双料参茸丸など

5.自律神経の乱れによる咳(肝火犯肺:かんかはんはい)

中医学における「肝」は自律神経全般を主ると考えられており、全身の「気」や「血」の流れを調節し、精神面の安定に関与していると考えらています。ストレスにより精神的な負荷がかかり自律神経が乱れると「気」の流れが乱れ、やがて暴走した「肝気」が「肺」を攻撃し咳が発生します。これを中医学では「木火刑金(肝火が肺金を刑す)」といいます。

このタイプの特徴は
・ストレスや緊張で咳が誘発される
・こみ上げるような咳
・普段からイライラしやすい、怒りっぽい、顔が赤くなる

暴走気味の「肝気」の流れを落ち着かせる漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:加味逍遙散、柴厚湯など

最後に

漢方薬は、風邪による咳の初期症状だけでなく、風邪の後に長引いている咳や慢性的に続いている症状へもアプローチできることが魅力の一つです。自身の体質に合った漢方薬を使用し、身体全体のバランスを整えることで、症状の完治へと近づけることができます。上記の考え方や漢方薬は、ほんの一例となります。咳や呼吸器のトラブルでお悩みを抱えておりましたら、ぜひ当店までご相談ください。


薬剤師 / 国際中医専門員(漢方の専門家) 中目 健祐

風邪の予防と漢方薬

はじめに

コロナウイルス(COVID-19)の流行がようやく落ち着きを見せたと思ったのも束の間、冬の訪れとともにインフルエンザやマイコプラズマ肺炎など、別の感染症が猛威をふるっています。。

かつては、体調を崩せば病院へ行き、薬局で必要な薬を手に入れることが当たり前でした。
しかし、現在では、医薬品の製造や流通の問題、薬価の引き下げなどが重なり、抗生物質や咳止めといった風邪薬が品薄・欠品となる事態が続いています。

このような状況の中で、私たちが出来ることは「症状を発症してからの対応」ではなく、いかにしてコロナウイルスやインフルエンザ、風邪に感染しない身体を作ることではないでしょうか。

🌿 中医学の知恵「未病先防(みびょうせんぼう)」
中医学には「未病先防:みびょうせんぼう」という考え方があります。
これは、病気が発症する前に体質をみながら対応するという「予防医学」に近い考え方です。
”未病”ケアを得意とする中医学の考えを取り入れ、感染症に負けない身体作りを目指してみませんか?

感染症カレンダー

実際に風邪をひいてしまったときの中医学的なケアについては👇
カゼと漢方薬 – 日々の生活に漢方を

中医学で考える風邪の予防

1.ウイルスや細菌から身体を守る

板藍根(ばんらんこん)は、「漢方の抗生物質・抗ウイルス薬」と呼ばれ、中国の家庭では風邪やインフルエンザの常備薬として古くから親しまれています。

中国では、1989~1990年のウイルス性肝炎の流行時に、効果的な抗ウイルス薬がなかったことから「板藍根」の研究が進み、治療と予防の中心的な薬剤として使用されました。
さらに、2003年に中国で大流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の際には、中国の衛生局が「板藍根に予防効果がある」と発表し、中国のみならず日本でもその名が広く知られるようになりました。

🌱漢方的な働きと効能

板藍根の主な働き
🔺清熱解毒(せいねつげどく)
🔺涼血利咽(りょうけつりいん)
→熱による炎症や血中の熱を取り除き、喉の痛みや熱を下げる働きがあります。

現代医学的にも
🔺抗ウイルス作用(多くのウイルスの働きを抑制)
🔺抗菌作用(幅広い抗菌スペクトルを持ち、多種類の細菌に対し効果)
があることが報告されています。

こんな時にオススメ!
✅周りで風邪が流行っている時に
✅人混みに行く前/行った後に
✅テストを控えた受験生や仕事を休めない時に
✅疲れからヘルペスが出そうな時に

💡飲みやすく、携帯しやすい形も◎

板藍根には
☕ 顆粒タイプ(お湯に溶かしてお茶のように)
🍬 飴タイプ(外出時の喉ケアに)
など様々なシーンで使用できます。
また、健康食品のため子供から年配の方まで安心して使用できます。

2.バリア機能を高める

ウイルスや細菌、花粉などから身を守るには、「体の中に侵入させない防御力=バリア機能」がとても大切です。
この感染源から身体を守る力を中医学では「衛気(えき)」と言い、皮膚や鼻・気管支などの粘膜細胞の強化と関係し、外的刺激から身体を守る働きをしています。

衛気力のチェック!
✅風邪をひきやすい
✅冷房や冷たい風に弱い
✅汗をかきやすい
✅鼻水が出やすい、垂れる

「黄耆(おうぎ)」や「白朮(びゃくじゅつ)」は、昔から「衛気」を高める生薬として知られています。
この2つはよくペアで使用され、衛気力が弱い方はこの2つが含まれた漢方薬である「衛益顆粒(玉屏風散)」を使用すると良いとされています。

🌸 花粉症対策にも!
この「衛気」を高めておくことは、花粉症の予防・軽減にもつながります。
詳しくは👉「花粉と漢方薬 – 日々の生活に漢方を

3.乾燥を防ぐ

感染症の予防には、「衛気」の働きを高めることが大切ですが、皮膚や粘膜などのバリア機能を保つには、ウイルスや細菌などの異物を洗い流すための”潤い”も必要となります。

乾燥度のチェック!
✅口を開けて寝ている
✅空咳がよく出る
✅喉や鼻の中が乾燥しやすい
✅呼吸器系が弱く、風邪を引くと咳が止まらない

中医学では、「邪気(ウイルス、細菌など)」の侵入にかかわる皮膚や目/鼻/喉の粘膜は「肺」がコントロールしていると考えます。
漢方薬では「肺」の働きを高め潤いを与える麦味参(生脈散)や「肺」や「胃」の潤いを補う百潤露などを使用すると効果的でしょう。

4.幻の茸シベリア霊芝(しべりあれいし)

ロシアのシベリア地方に自生する「チャガ(シベリア霊芝)」は、その地域に“がん患者が少ない”という調査結果から世界中の注目を集めたキノコです。

地元の人々は、シベリア霊芝をお茶として飲む習慣があり、その背景には、そ免疫の調節や炎症の抑制、利尿などの効能があるということが分かりました。

漢方的な働きは、補気健脾(ほきけんぴ)や補肝益腎(ほかんえきじん)があるとされ、胃腸や肝腎(西洋医学の肝と腎とは異なる)の働きを高め、ウイルスや細菌などと戦うために必要な力を補う働きがあります。

こんな方にオススメ!
✅ちょっとしたことで風邪を引く
✅すぐ疲れる、体力の低下が気になる
✅普段から食欲がない
✅板藍根を服用するとお腹を下す

最後に

病気を未然に防ぐことを得意とする「中医学」と、
病気が発症してから治療を行う「西洋医学」。
それぞれに強みと役割があり、どちらも私たちの健康にとって欠かせない存在です。

あなたの体質に合わせた漢方薬や生活養生を通して、コロナ・インフルエンザ・風邪などに負けない“ブレない体”を育てていきましょう。

「今年こそ、風邪をひかない冬にしたい」
「なるべく薬に頼らず、自然な形で体調を整えたい」
そんな想いがありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐

口臭と漢方薬

はじめに

「あれ?もしかして自分の口、臭ってる…?」
ふとした瞬間に気になる“口の臭い”。

人と話す前に手で口を覆ってチェックしたり、マスクで口元を隠したり、会話中も「大丈夫かな?」と相手の反応を伺ってしまう…
そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。

実際に口臭に悩まれている方の多くは
✅歯磨きや舌掃除
✅ガム/タブレット
など、基本的な口腔ケアをしっかり行っているにもかかわらず、
「なかなか改善しない」「一時的に良くなってもすぐに臭ってきてしまう」
というお悩みを抱えていらっしゃいます。

中医学では、こうした口臭の原因を「口の中だけの問題」とは考えません。
実は、体内で発生した「熱」が原因となって、口臭として現れるケースが多いです。

漢方薬は、表面的な対処ではなく、「熱の」原因を根本からアプローチできるのが強みです。
他人の目を気にせず、もっと自信を持って笑顔になれる毎日を、漢方と一緒に目指してみませんか?

口臭の原因

口臭の原因は①生理的原因と②病的原因、そして③飲食物や嗜好品による外因的要因の3つに分類されます。

中医学で考える口臭

上記でも述べたように中医学では、臭いの原因を体内で発生した「熱」によるものと考え主に以下の3つ分類されます。

1.胃熱(いねつ)

中医学における「胃」の働きは、現代医学の機能と近い部分があり、主に以下のような機能を担っています。

①受納(じゅのう):飲食物を受け入れる

②腐熟(ふじゅく):飲食物を消化しやすい状態にする

③降濁(こうだく):消化した飲食物を小腸へ降ろす

「胃熱」とは、胃の働きが過剰になり、まるでエンジンが“オーバーヒート”している状態。
この状態では、①~③のの働きが活発となり、食べても食べてもどんどん空腹感を感じるようになります。その結果、胃の処理(腐熟)能力を超え、飲食物がうまく処理されず悪臭を漂わせるようになります。
まさにゴミ収集車に回収されず残ったゴミが悪臭を放つイメージです。

<主な特徴>
✅食べてもすぐ空腹になる
✅冷たい飲み物を好む、口・喉が渇く
✅便秘
✅舌全体が紅い

「胃」の熱を清ます漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:黄連解毒湯、三黄瀉心湯、半夏瀉心湯など

💡胃熱の主な原因とは
🔺食生活の問題
→脂っこいもの、甘いもの、味の濃いものやアルコールの過食過飲は、「胃」に熱を溜め込みます。

🔺ストレスの影響
→精神的なストレスを受けると、自律神経を主る「肝」の働きが乱れます。
この「肝」が隣接する「胃」に影響を及ぼすと、「胃」の働きが過剰になり「胃熱」の状態へと変化していきます。
ストレスを感じたり、生理前(PMS)になるとつい過食してしまう方は、、「肝」の不調から「胃熱」に至っているケースが考えられます。

2.湿熱(しつねつ)

本来であれば体外へ排出されるべき、ドロドロとした余分な老廃物——
中医学ではこれを「痰湿(たんしつ)」と呼びます。

この「痰湿」が対何に長く停滞すると、次第に熱を帯び「湿熱」という状態へに変化していきます。
「胃熱」と同様、胃内に蓄積された飲食物が腐敗し蒸されることで口臭の原因となります。

<主な特徴>
✅口が粘る
✅暑がりで汗っかき
✅胸焼けがする、胃酸が逆流する
✅舌に苔がべっとりついてる

口臭の原因でる「湿熱」を除去する漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:星火温胆湯、黄連解毒湯、瀉火利湿顆粒など

❗ 舌掃除では根本解決にならない…?
口臭対策のひとつとして「舌の掃除」をされる方も多いと思います。

もちろん一時的な口臭の軽減にはなりますが、そもそも舌に苔がつく理由は、体内に停滞した「痰湿」や「湿熱」が原因です。

つまり、体の中に原因である「痰湿」や「湿熱」が存在する限り、どれだけ舌を掃除しても苔は生まれてしまうということです。
根本的な改善のためには、舌苔を“取り除く”のではなく、“できにくい体質”に整えることが大切です。

3.虚熱(きょねつ)

「虚熱」とは、体を冷やすために必要な“潤い”が不足することで、相対的に熱が発生している状態をいいます。
口の中には「唾液」、胃の中には「胃液」という潤いがあり、これらには
🔸食べ物の消化を促す
🔸食べかすや汚れを洗い流し口内を清潔に保つ
🔸食べ物の消化や栄養の吸収を促す
なのどの重要な働きがあります。

したがって、口内や胃内の潤いが減ってしまうと、未消化の飲食物が残りやすくなったり、体内の冷却水の減少から発生した「虚熱」が口内にこもり口臭の原因となります。

<主な特徴>
✅ドライマウス
✅空腹感はあるが食欲はない
✅胃の灼熱痛、痞え
✅舌の苔が少ない

身体に潤いを補う漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:甘露飲、竹葉石膏湯、麦門冬湯など

最後に

ここまで紹介してきたように、口臭は体質や普段の食生活と密接に関わっています。

もし口臭が気になる方は、まずは和食中心のヘルシーな食事を心がけながら、下記のような“体にやさしい食材”を積極的に取り入れてみましょう。

💡タイプ別おすすめ食材

🔸胃熱・湿熱タイプ
・野菜:苦瓜、きゅうり、チンゲンサイ、ゴボウ
・お肉:豚肉
・果実:スイカ、キウイフルーツ、バナナ
・その他:緑茶、お蕎麦、海藻類

🔸虚熱タイプ
・野菜:レンコン、ゆり根、大根、トマト
・お肉:豚肉
・果実:梨、ブドウ、マスカット
・その他:豆乳、蜂蜜、白キクラゲ

🧠 実は「におっていない」ことも?

口臭のお悩みの中には、実際には全く臭いがしていないのに「自分の口が臭っている気がする」と思い込んでいる場合(自臭症)もあります。
この場合は、「熱」による問題ではなく「こころ=精神面」へのアプローチが必要となります。

漢方薬や日々の養生を通じて、「においを気にせず笑顔で過ごせる時間」を一緒に取り戻していきましょう。

においのお悩みがある方は、どうぞお気軽にご相談ください。

薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐

耳鳴りと漢方薬

はじめに

耳はその複雑な構造から治療が非常に難しいと言われています。

特に「耳鳴り」は、原因がはっきりとしないケースも多く、日本人全体の10~15%が悩んでいるとされ、特に65歳以上に限ると約30%に耳鳴りを抱えているとも言われています。

薬局では、よくビタミン剤(メコバラミン:ビタミンB12)や血行改善薬(カリジゲノナーゼ、アデノシン三リン酸)を試してみたものの、「思ったような効果がなかった」という声を耳にします。

・年齢のせいか聴力が落ち、「ジー」という音が気になり始めた
・ストレスや疲れがピークに達すると「キーン」と高い音がする
・耳が塞がったような感じがして音がしっかり聞き取れない、「ゴー」と重い音がする

このように、耳鳴りの“音の質”や“きっかけ”は人によってさまざま。
まずはカウンセリングを通して自身の体質を知ることが症状改善の近道かもしれません。

📚耳鳴りの分類

耳鳴りは大きく分けて2つに分類されます。

1.自覚的耳鳴:周囲に音がないのに耳の中で「キーン」や「ピー」など本人しか聞こえない耳鳴り
2.他覚的耳鳴:耳の中で音が鳴り、外にも聞こえることがある耳鳴り

参考:病気がみえる(耳鼻咽喉科)

中医学で考える耳鳴り

中医学では、耳鳴りを耳の病変として捉えるのではなく、身体全体(特に五臓の肝、脾、腎)や気血水(津液)のバランスが影響していると考えます。

参考:病気がみえる(耳鼻咽喉科)

1.肝タイプ

📕中医学の古典には次のような記述があります。
「木(肝)鬱之発・・・甚則耳鳴、眩転」
(鬱を発し・・・、甚だしい時は耳鳴し、眩暈する)

ストレスを強く感じたり、憂鬱や怒りなどの精神的な負荷がかかると自律神経を司る「肝」が我慢の限界を迎えオーバーヒートを起こし、その熱は頭部へと上昇します。

さらに「肝胆」の経絡は、耳をまとう形で分布しているため「肝」により発生した熱は頭部の中でも特に耳に伝わります。

たとえば、怒りがこみ上げたときに顔や耳が赤くなるのを経験したことはありませんか?
それはまさに、肝火が頭部に上がった状態です。このような背景から起こる耳鳴りを「肝タイプ」です。

<主な特徴>
✅「キーン」と高い耳鳴り
✅感情の変化で症状が悪化する
✅頭痛、めまい
✅赤ら顔、目が赤い

「肝」のオーバーヒートを抑える漢方薬や「肝気」の流れを良くする漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:竜胆瀉肝湯、加味逍遙散、 柴胡加竜骨牡蛎湯など

2.脾胃タイプ

中医学では、頭部を「清陽の府」といい、全身の陽気(栄養素)が集まる場所とされています。
「脾胃(ひい)」は、現代医学の胃腸に近い役割をしており、食べたものから身体の基礎となる「気」や「血」を作り出し、頭部へ運ぶ働きをしています。
ところが、「脾胃」が弱ると、十分な栄養やエネルギーが頭まで届かなくなり、耳や脳の機能が低下して耳鳴りや立ちくらみといった症状が現れます。

<主な特徴>
✅疲れると耳鳴りがする
✅よく立ち眩みをする
✅食欲がない、疲れやすい
✅下痢、軟便気味

「脾胃」の働きを高め、「気・血」を上部へ運ぶ漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:補中益気湯

3.腎タイプ

📘中医学の古典には次のような記述があります。

「髄海不足、則脳転耳鳴」
(髄海不足すれば、則ち脳転がり耳鳴りす)

「察耳之枯潤、知腎之強弱」
(耳の枯潤を察て、腎の強弱を知る)

中医学での「腎」は、「髄(骨)」を生み出し、その「髄」が集まることで脳を形成すると考えます。脳に「髄」が十分に満たされていれば、脳は正常に働き、耳の機能を維持することができます。

しかし、加齢とともに「腎精」が不足すると「髄」が空っぽになり耳の働きが弱まります。
また、中医学では「腎は耳に開竅する」という言葉もあり、「腎」と「耳」は切ってもきれない関係にあります。

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<主な特徴>
✅「ジー」という蝉の音のような低い音が続く
✅物忘れを頻繁に起こす
✅足腰がだるい、腰が痛い
✅頻尿、夜トイレで起きることが多い

不足した「腎精」を補う漢方薬や「腎」の働きを高める漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:六味地黄丸、滋腎通耳湯、亀鹿仙など

4.その他

①水溜まりタイプ
📙中医学の古典には次のような記述があります。
「痰火上昇、鬱於耳中為耳鳴」
(痰火が上昇して、耳中に鬱滞すると耳鳴する)

たとえば、風邪を引いた時にネバネバした痰が出たり、詰まることがありますよね?
このタイプの耳鳴りは、まさに体内に滞った「痰」が耳や頭に影響を与えている状態です。

<主な特徴>
✅耳が塞がったような感じがする
✅頭が重い、めまいがする
✅胃や胸がムカムカする
✅口が苦い、粘る

「痰」の原因である余分な水分や老廃物を除去する漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:星火温胆湯、竹茹温胆湯、半夏白朮天麻湯など

💡「脾胃」との深い関係
中医学では「脾は生痰の源」といわれ、「脾胃」の働きが弱ると水液代謝がうまく機能せず、「痰湿(たんしつ)」といわれる余分な水が生じやすくなります。
そのため、「脾胃タイプ」と「痰湿タイプ」は併発することが多く、その場合は「痰」を取り除きながら「脾胃」の働きを高める漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:健胃顆粒(香砂六君子湯)、半夏白朮天麻湯など

 ②血の滞りタイプ
中医学における「血」は、身体に栄養を届け、臓腑の働きを支える重要な物質とされています。特に頭部は、脳内血管や脳内血流という言葉があるように、多くの「血」が流れています。
血の巡りが悪い「瘀血(おけつ)」の状態だと、脳疾患(脳梗塞や脳血栓)を引き起こす原因になったり、耳の働きを低下させ耳鳴りの症状へとつながります。

📕中医学の古典には次のような記述があります。
「耳孔内の小管が脳に通じており、管内に血があれば管は閉塞され、耳聾する」(通竅活血湯より)

これは、耳と脳が細い通路でつながっており、そこに血の滞りが生じると音が聞こえづらくなり、耳鳴りや難聴につながるという考え方です。
つまり、血の流れをスムーズに保つことが、耳の健康維持にも直結します。

漢方薬の例:冠元顆粒、血府逐瘀丸、田七人参など

最後に

「耳鳴りや難聴は治らないもの」「年齢のせいだからしょうがない」「上手く付き合っていくしかない」と諦めている方も多いと思います。

病院では「この症状にはこの薬!」と病名治療が行われ、なぜその症状が発生したのか、背景にどんな体質や生活習慣があるのかにまで目が向けられることは少ない傾向にあります。

一方、中医学では、「なぜその症状が出ているのか」を丁寧に探り、一人ひとり異なる体質や生活環境に合わせて対応することを大切にしています。

お客様のお話をじっくり伺いながら、耳鳴り・難聴に付随する症状(メンタルや睡眠状態も耳鳴りや難聴に関係しているといわれています。)に合わせて漢方薬をご提案させていただきます。
耳鳴りや難聴のことでお悩みがありましたら、「仕方ない」と諦めず、ぜひ一度ご相談ください。

薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐