紫外線・日焼けと漢方薬

はじめに

梅雨が明けて夏の陽射しが強まる季節、気になってくるのが「日焼け」や「くすみ」など、肌への紫外線ダメージではないでしょうか。
特に近年の日本は、まるで亜熱帯のような猛暑が続き、紫外線の強さも年々増してるように感じます。

紫外線対策として日焼け止めを使う方が多いと思いますが、
「塗り直しが面倒…」
「肌荒れや乾燥が気になる…」
そんなお悩みを抱えている方も少なくありません。

日焼け止めのデメリットを補いつつ、内面から紫外線を守る「中医式 紫外線対策」で日焼けやくすみの対策をしてみませんか?

紫外線について

日光(紫外線)を浴びることは、骨密度や免疫力の維持、体内時計のリセットなどのメリットがある一方で、紫外線を浴びすぎると肌の日焼けやシミ、たるみの原因となります。

☀️紫外線には種類がある
紫外線にはUV-A、UV-B、UV-Cがありますが、地上に届くのは主に「UV-A」「UV-B」の2種類です。

◆UV-A:シワ、タルミの原因となる
波長の長いUV-Aは、肌のより深く(真皮)まで侵入し、皮膚を構成するコラーゲンやエラスチンなどにダメージを与えます。このダメージが蓄積されると、肌は弾力を失いシワやタルミを引き起こす原因となります。また、日差しを浴びた後にすぐ黒くなるのはUV-Aの影響といわれています。

◆UV-B:シミ、ソバカスの原因となる
UV-BはUV-Aより波長が短いため肌の奥深くには届きませんが、その分ダメージが強く、肌の炎症を引き起こすため、肌が赤くなったり、メラニン色素が沈着してシミやソバカスの原因になります。

日焼け止めのPA、SPFって?

◆PA:Protection Grade of UVA
UV-Aを防ぐ指標。「+」「++」「+++」「++++」の4段階で表示され、「+」の数が多いほど、UV-Aに対する防止効果が高いです。
 
◆SPF:Sun Protection Factor
UV-Bを防ぐ指標。1~50(50を超える場合は50+)で表示され、数値が高いほど、UV-Bに対する防止効果が高いです。

中医学で考える紫外線対策

1.💧補陰=潤いを補う
 夏の強い日差しや紫外線を浴びると、お肌はたっぷりの水分を失ってしまいます。イメージとしては、まるで干物のお魚のように…中がカラカラに乾いていると、ちょっとした熱でもすぐに焦げてしまう状態です。

スキンケアで保湿クリームを使っている方も多いと思いますが、これはあくまで肌の表面を守るものです。実は、クリームに含まれる成分の多くは皮膚の奥深くまで届かないため、本当の意味での「潤い補給」にはなりにくいです。

中医学には、「体の内側から潤いを補う=補陰」という考え方があります。
紫外線の対策には、外から守るケア+内から潤すケアの両方があるとベストです。

<潤いを補う漢方薬の例>
艶麗丹(哈士蟆油含有製剤)、亀鹿仙、婦宝当帰膠など

2.💪補気=バリアを作る
 「気」とは、体を守るエネルギー源のようなもの。
この「気」が不足していると、肌の表面にあるバリア(汗腺や毛穴をコントロールする働き=腠理〔そうり〕)がゆるみやすくなり、体内の水分が逃げやすくなります。その結果、日焼けしやすく、乾燥しやすいお肌になってしまいます。

<「気」が不足しているサイン>

✅風邪を引きやすい
✅汗をかきやすい
✅疲れやすい
✅すぐ息がきれる など

<「補気」に役立つ漢方薬の例>
西洋人参、衛益顆粒、補中益気湯など

3.🩸活血=血流を良くする
せっかく体の中に「潤い(陰血)」や「エネルギー(気)」を補っても、それをお肌までしっかり届ける血流が悪ければ意味がありません。
お肌に栄養が行き渡らないと、皮膚の新陳代謝や再生が低下し、健康でみずみずしく美しい状態に維持することが難しくなります。
また、中医学ではシミやクスミ、そばかすは血の滞りが原因と考えられているため、血流を整えることが美肌への近道となります。

<血流を良くする漢方薬>
紅棘沙(ホンサージ)、冠元顆粒、水快宝など

🌿棘沙(サージ)って?
中国では「美容の果実」「ビタミンの宝庫」とも呼ばれ、お肌の修復や美白、エイジングケアにうれしい栄養がぎっしり詰まった果実です。
✔ ビタミンE:皮膚や粘膜の修復、抗酸化作用
✔ ビタミンA:シワの改善や肌のハリUP
✔ ビタミンC:メラニン生成を抑え、シミ予防にも◎

最後に

中医学では「皮膚は内臓の鏡」とされており、お肌の状態は身体内部のバランスを映し出すものと考えられています。
いくら高価な日焼け止めやスキンケア商品を使っていても、身体内部の状態が良くなければ健康で綺麗なお肌を維持することは困難です。
漢方薬をはじめ、生活習慣や食事内容を見直しながら、お一人おひとり内面のをケアするお手伝いを出来たらと思います。

紫外線対策はもちろんのこと、皮膚の乾燥・痒み・シミ・くすみなどでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
中医学の視点から、あなたにとって最適な「内側からの美容ケア」をご提案させていただきます。

薬剤師 / 国際中医専門員  中目 健祐

高血圧と漢方薬

はじめに

高血圧は、別名「サイレントキラー」とも呼ばれ、血圧が高い状態のままでいると、脳卒中や心筋梗塞、腎不全など重大な合併症を引き起こす可能性が高くなります。
実際に日本人の死因で上位を占める「心疾患(第2位)」「脳血管疾患(第4位)は高血圧と関連があり、血管に大きな負荷をかけないことが非常に重要になります。

中医学には、病気の発症や病状が悪化する前に未然に防ぐ「未病先防(みびょうせんぼう)」という考え方があります。
高血圧を診断された段階では、まだはっきりとした症状を感じないことも多いですが、この“未病”の時点でしっかりと対処していくことで、将来的な合併症のリスクを抑えることができます。

血圧の基礎知識

血圧とは?
血圧とは、心臓から送り出された血流が血管(動脈)の内壁を押す力(圧力)を指し、心臓から拍出される血液量(心拍出量)と末梢血管での血液の流れにくさ(末梢血管抵抗)により決まります。

血圧の「上」と「下」って?
血圧を測定すると「上が130で下が80」といった数値が表示されますが、そもそも「上」と「下」の違いは何でしょうか?

・上=収縮期血圧(最高血圧)
心臓が収縮して血液を全身に送り出すときの血圧

・下=拡張期血圧(最低血圧)
心臓がポンプするために血液をためて膨らんでいる(拡張している)時の血圧

高血圧の診断基準
日本高血圧学会の「ガイドライン2019」によると、病院などの医療機関で測定した血圧(診察室血圧)では「収縮期血圧は140mmHg、拡張期血圧は90mmHg」以上を高血圧としています。
家庭で測定した「家庭血圧」は医療機関での測定より低い数値が出る傾向にあるため、それぞれ5mmHgを引いた数値となります。

また、降圧目標は下記のように設定されています。

中医学で考える高血圧

1.瘀血阻絡(おけつそらく)

「瘀血」とは、血管に溜まった汚れや血液がドロドロした血の巡りを悪い状態を指します。
一般的に血管というと、動脈や静脈といった太い血管をイメージされますが、太い血管は全体の1%程度で、その他は太さ6μm程の目に見えない毛細血管が99%を占めています。
この毛細血管の血液の流れが悪いと、血管の抵抗性が高まり血圧の上昇へとつながります。また、血液の流れが悪いことで心臓が血液を流そうと頑張ってポンプするため血圧が高くなります。

<🩸瘀血タイプの特徴>

✅頭痛・めまいがある
✅首や肩のこりがある
✅手足の静脈が浮き出ている
✅生理痛がある、生理に塊が混じる
✅舌裏の血管が青紫色に怒張している

血の巡りを良くする漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:冠元顆粒、血府逐瘀丸、田七人参など

2.湿熱内停(しつねつないてい)

血の巡りを悪くする原因は「瘀血」だけではありません。
中医学では、体に溜まった不要な水分や老廃物を「「痰湿」といい、この「痰湿」が体内に長く停滞すると、やがて熱を帯びて「湿熱」という状態へと変化します。

「湿熱」が血管内に溜まると、まるでヘドロで詰まった水道管のように、血管の流れが悪くなり、血圧が上がる原因となります。

<🗑️湿熱タイプの特徴>

✅脂っこいもの、味の濃いもの、お酒が好き
✅ぽっちゃり体型(メタボ体型)
✅身体が重だるい、胃がむかむかする
✅口が苦い、臭い、粘る
✅舌に苔がべっとりついてる

老廃物である「痰湿」や「湿熱」を解消する漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:星火温胆湯、瀉火利湿顆粒(竜胆瀉肝湯)、黄連解毒湯など

3.肝陽上亢(かんようじょうこう)

「肝陽上亢」とは、体内の潤い(陰血)が減り、熱(陽気)が相対的に強まっている状態をいいます。

イメージとしては、やかんでお湯を沸かすときの状態。
水がたっぷりあるとバランスが取れてゆっくり沸きますが、水が少ないとすぐに煮え立って湯気が噴き出しますよね。
この”水”が少なく、湯気(熱)が上に昇るような状態がまさに「肝陽上亢」です。

<♨️肝陽上亢タイプの特徴>

✅のぼせて顔が赤くなる
✅頭痛、めまい、耳鳴りがする
✅足腰がだるい
✅寝汗をかく

上部へ上昇した「陽」を抑える漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:釣藤散、降圧丸など

また、上記に合わせてやかんの水の部分(中医学では「陰」といいます。)を補給するような漢方薬を使用するとより効果的です。
漢方薬の例:双料杞菊顆粒(杞菊地黄丸)、瀉火補腎丸(知柏地黄丸)、亀鹿仙など

4.その他:沙棘(サージ)製品

上記で述べたように、血圧が上がる原因の一つとして血管壁の弾性がなくなり血管が硬くなることで起きる場合があります。
このような時に血管を柔らかくしたり、微小循環の改善や抗酸化作用のある沙棘(サージ)製品を使用すると血圧が下がる場合があります。

最後に

漢方薬は、西洋薬のようにすぐに血圧をガクッと下げるものではありません。
しかし、中医学の大きな強みは「未病先防」——つまり、症状が本格的に現れる前の段階から体を整え、病気の予防や悪化の防止に役立てることができる点にあります。
自身の体質を理解し、漢方薬で病気になりにくい体を作りませんか。
血圧や血流に関するお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐