感染症 No2 スペイン風邪に学ぶこと

4月15日放送分 ナカノメすかやかDAY 毎週水曜日 15:30から

ウィルス対策は過去に学ぶことが必要と感じています。 1918年から1920年に世界的パンデミックのスペイン風邪の対策は貴重な歴史と言えます。

その対策は・・・

1.スペイン風邪は日本での感染症対策の原典

当時の日本の人口は5500万人で、人口の43% 2300万人が感染したのです。スペイン風邪は季節的なインフルエンザだったので、1918年の流行は翌年の春には一時終息しました。しかし、その年の秋には再び流行しました。第2波です。第2波での感染者数は当初より減ったのですが、致死率が5倍になったのです。 

当時政府は感染予防に「流行性感冒予防心得」を交付しています。その内容は今でも通用する内容です。①かぜは如何にして伝染するか ②罹らぬには に分かれています。 例えば①では人から伝染するので、かぜをひいた人の咳やくしゃみで微細な泡沫が3-4尺(90から120cm)飛ばされそれを吸い込むと罹る と書いています。

正に咳による飛沫感染の危険性のことですね。

②罹らぬには・・・には 病人らしい者に近づかない。 沢山人が集まるところには立ち入らない 人の集まっている場所ではマスクをかけ、ハンカチで口を塞ぐ・・・ など。

当時の人々は今よりも見えない敵に立ち向かっていたのです。そして、3年にも及ぶ長期間スペイン風邪との闘いを強いられたのです。

現在の我々は医療の進歩で感染症にも短期間に打ち勝つ能力を身に着けたと勘違いしています。 100年前と変わらぬ対策方法で感染予防をしているのが現状です。

過去に学んで、今回のコロナウィルスは感染症に謙虚になることを現代人に求めている気がしてなりません。

次は・・・・その後のウィルス感染と漢方の知恵についてお送りします。

感染症 No1 戦いの歴史をふり返る

4月15日放送分 ナカノメすかやかDAY 毎週水曜日 15:30から

新型コロナウィルスに不安を感じている方も多いと思います。しかし、人間は常に感染症との闘いを行ってきました。過去を振り返ることに今を生きるヒントがあります。

先人の努力を紐解いてみましょう。

1.天然痘

人類と感染症の戦いの歴史を振り返ることができる資料は、紀元前に埋葬されたエジプトのミイラに天然痘の痕跡があるとされています。

日本では6世紀に流行し、それ以降は周期的に患者が発生しました。天然痘はウィルスによる感染症です。感染力が強く、致死率も50%にも及び非常に危険です。治っても発疹が残り見た目にも無残な状態になると言われています。ワクチンの普及で1980年にWHOは天然痘の絶滅宣言を行っています。

2.ペスト

14世紀ヨーロッパで猛威を振るったのはペストです。人口の3分の1、2500万人が死亡したと言われています。ペストはねずみやノミの体内に生息するペスト菌による細菌感染症です。日本でも19世紀末から1920年ごろ流行しましたが、ペスト菌の発見者の一人、北里柴三郎の尽力で1926年以降は発症していません。日本では克服した感染症の一つです。

ペストには抗生物質が効果を発揮します。しかし、世界的には今でも散発的に発生していますので、要注意です。

3.スペイン風邪

20世紀にパンデミックを引き起こしたのが、スペイン風邪です。第一次世界大戦中の1918年に大流行し4000万人が亡くなったと言われています。 「新型インフルエンザ」(山本太郎著 岩波新書)スペイン風邪はインフルエンザウィルスによる感染症です。中国南部、米軍キャンプで発生したと2つの説があると書いています。 いずれにせよ、世界大戦でヨーロッパに派遣された兵士によって、拡散し世界規模になったのです。当時は戦時下で戦争当事国は患者数を公表せず、中立国であったスペインが被害を公にしたため、命名されたのです。 スペインには迷惑な話ですね。

日本でも2300万人が感染し、38万人が犠牲になったと記録されています。

スペイン風邪は鳥が媒介するA型インフルエンザと後から判明します。鳥から豚などに感染したウィルスが変異して、それが人に感染したと言われています。

また、当時は戦時中であり、医療や食糧事情に困窮していた点も死亡者数を増大させた可能性も指摘されています。当時の対策は政府発行の「流行性感冒予防心得」(1919年)にあります。その内容は・・・・。

認知症 No4 まとめ

ナカノメすかやかDAY 毎週水曜日 15:30から 

治療薬の開発は今後も継続するとは思いますが、かなりの困難が予想されています。それは、認知症に伴う症状の多様性にあります。一般的に認知症は記憶障害を中心とした中核症状(認知症の人であれば誰にでも現れる症状)と幻覚や妄想、不穏などの行動障害と伴う周辺症状(行動心理症状で誰にでも生じるのではない症状)に分けて考えます。社会的に問題となるのは周辺症状です。問題行動とも言われます。周辺症状は一般的には普通の人ならはしない行動とか文化的に不釣り合いな行動と理解されます。つまり、周りの人がそう感じたら症状があるということです。

認知症介護研究・研修東京センターの研究では次のような例を挙げています。施設入所した認知症の方が家に帰りたいと訴える際の5つの行動の内どれが、周辺症状に該当するかを示しています。 入所者が①家に帰りたいとつぶやく ②帰りたいと大声を出す ③玄関の前に立ち続ける ④帰せと怒鳴った ⑤ドアを蹴った の5つです。

施設では一般的に①帰りたいとつぶやいた 以外は異常行動と見なされることが多いと研究センターでは述べています。しかし、自分の意に反して施設に連れてこられたら、誰でも帰りたいと思うのは当然かもしれません。たとえ、ドアを蹴ったり、介護員に暴言を吐いても本人には正当な行為です。とすると、認知症の症状ではないかもしれません。

認知症の問題行動には抗精神病薬が使われることがあります。これは、認知症患者本人を治療する薬ではありません。認知症の治療薬の範疇にははいりません。 そこで、認知症の治療薬の今後の可能性を考えるには、もう一度認知症本来の症状を振り返ってみる必要があります。

認知症は成年期以降に記憶や言語、知覚、思考などに関する脳の機能低下が起こり日常生活に支障をきたすようになった障害」でしたね。生活障害の改善を薬に求めるのは難しいのでしょう。 薬よりも社会の在り方が重要と考えます。

 

 

長谷川先生はそのことを端的に「暮らしの障害」と言った訳です。認知症の治療薬を開発する際の効果を推し量る指標には、生活障害の改善度は含まれていません。さらに本人が自覚しない問題行動の改善も含まれません。指標には点数化しやすい長谷川式などの認知症スケールです。

 

 

 

認知症 No3 治療薬とその限界

ナカノメすかやかDAY 毎週水曜日 15:30から 

現在臨床に用いられているのは神経伝達物質に関連する薬で4つです。 そのうち3つが、神経伝達物質アセチルコリンの減少を抑える薬です。最初の薬がアリセプトといいます。この薬は日本の製薬会社の研究所で15年にも研究開発の成果として1999年に世界初のアルツハイマー型認知症の治療薬として発売され注目を集めました。今でも軽度から重度に処方されます。

開発者の杉本八郎さんは高校卒業後製薬会社に研究補助員として就職したのです。大卒との待遇の格差に奮起して、働きながら夜間の理工学部を卒業するという苦労人です。 大学卒業後も研究職を続け高血圧治療薬などの開発を手掛けていたのです。 しかし、女手一つで自分を育ててくれた母が認知症になり、治したいという一心で製品化したのがアリセプトです。

製品に辿り着くまでには紆余曲折、いくつもの壁を乗り越えたとNHKテレビの逆転人生「執念の開発 世界が驚いた認知症治療薬」で昨年放送されていました。 当時は世界初の認知症治療薬として注目されました。しかし、認知症の進行を遅らせるのがこの薬の治療目的であるため、治せるのではありません。 

認知症 No2 

4月1日放送つづき

ナカノメすかやかDAY 毎週水曜日 15:30から 

認知症とは「一度正常に発達した知的機能が後天的な脳の器質障害によって持続的に低下し、日常生活、社会生活が営めない状態である」(厚生労働省HPより) この定義は医学的なモデルですが、標準的な解釈とされています。しかし、この定義では脳の障害が原因で発症すると改善の余地はない疾患と見なしています。

しかし、この点は長谷川先生の本でも指摘していますが、「認知症になっても、連続した時間を生きており、感情も意思も認知症になったからと言って突然人が変わるわけではない」との発言に私自身も医療介護従事者として考えさせられます。

長谷川先生は相手の言うことを良く聞いてほしいと主張します。 認知症を介護する人の中には「こうしましょう」「こうしたらいかがですか?」と話を進めてしまう人がいますが、そのような態度では認知症の人は混乱し、思っていることが言えなくなってしまうのです。時間を掛けて、相手の言うことを待って欲しいのです。自分が介護する側になったら、相手の話に時間を掛けて聴くのは難しいとおもいます。でも大切なことなのですね。

私も認知症患者を在宅訪問しています。薬の話はあまりしていません。むしろ、言いたいことを聴くように心がけています。毎回同じ話になることが多いのですが、初めて聞く態度で対話をします。同じ話でも微妙に違うこともあるからです。 認知症の人は、話し相手が自分の味方かそうでないかを瞬時に見分けると聞いたことがあります。真偽は不明ですが、私は真実と思っています。

 

 

FM奥州 4月1日放送 認知症

ナカノメすかやかDAY 毎週水曜日 15:30から 

認知症とはどのような病気でしょうか? 昨年末に出版された「ぼくはやっと認知症のことがわかった」(KADOKAWA 2019年)を基に認知症の話をしましょう。 この本の著者は認知症専門医の第一人者長谷川和夫先生です。 長谷川先生の名前は医療介護関係者で知らない人はいない程有名な方です。 この本は先生自身が認知症になって、その体験を本にして、公表したのです。自分が認知症になって、ようやく認知症がわかったというのです。 本の中で、認知症の本質は「いままでの暮らしができなくなること」と先生は書いています。当たり前にできていたことができなくなる。つまり、認知症は暮らしの障害、生活障害という視点は当事者ならではの言葉です。  認知症は脳の疾患でを個人の問題と捉える「医学モデル」が標準的なモデルとして捉えられている。しかし、介護の在り方や共存を目指す地域社会が重要とする考え方もあります。 その点について、自分なりの考えを表現したいと思います。

ナカノメすこやかDAY FM奥州 

毎週水曜日 15:30から  出演 高橋 ゆきえ AN 中目 祐幸  

健康情報がネットやTV,ラジオで飛び交い、不安に感じる人も多くいます。 放送では健康に関するトピックスを漢方的に独自の解釈で説明しています。 また、漢方(中医学)での体質の診断方法や漢方薬の作用についても細かく解説しています。聴いただけでは、判らないとの声にお応えして、ブログで解説しています。

4月1日 認知症の話です。  長谷川和夫先生の本「ぼくはやっと認知症のことがわかった」を基にお話します。