認知症 No4 まとめ


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治療薬の開発は今後も継続するとは思いますが、かなりの困難が予想されています。それは、認知症に伴う症状の多様性にあります。一般的に認知症は記憶障害を中心とした中核症状(認知症の人であれば誰にでも現れる症状)と幻覚や妄想、不穏などの行動障害と伴う周辺症状(行動心理症状で誰にでも生じるのではない症状)に分けて考えます。社会的に問題となるのは周辺症状です。問題行動とも言われます。周辺症状は一般的には普通の人ならはしない行動とか文化的に不釣り合いな行動と理解されます。つまり、周りの人がそう感じたら症状があるということです。

認知症介護研究・研修東京センターの研究では次のような例を挙げています。施設入所した認知症の方が家に帰りたいと訴える際の5つの行動の内どれが、周辺症状に該当するかを示しています。 入所者が①家に帰りたいとつぶやく ②帰りたいと大声を出す ③玄関の前に立ち続ける ④帰せと怒鳴った ⑤ドアを蹴った の5つです。

施設では一般的に①帰りたいとつぶやいた 以外は異常行動と見なされることが多いと研究センターでは述べています。しかし、自分の意に反して施設に連れてこられたら、誰でも帰りたいと思うのは当然かもしれません。たとえ、ドアを蹴ったり、介護員に暴言を吐いても本人には正当な行為です。とすると、認知症の症状ではないかもしれません。

認知症の問題行動には抗精神病薬が使われることがあります。これは、認知症患者本人を治療する薬ではありません。認知症の治療薬の範疇にははいりません。 そこで、認知症の治療薬の今後の可能性を考えるには、もう一度認知症本来の症状を振り返ってみる必要があります。

認知症は成年期以降に記憶や言語、知覚、思考などに関する脳の機能低下が起こり日常生活に支障をきたすようになった障害」でしたね。生活障害の改善を薬に求めるのは難しいのでしょう。 薬よりも社会の在り方が重要と考えます。

 

 

長谷川先生はそのことを端的に「暮らしの障害」と言った訳です。認知症の治療薬を開発する際の効果を推し量る指標には、生活障害の改善度は含まれていません。さらに本人が自覚しない問題行動の改善も含まれません。指標には点数化しやすい長谷川式などの認知症スケールです。