はじめに
立春を迎え暦的には春になりました。まだまだ寒い日は続きますが、春のぽかぽか陽気は少しずつ近づいています。春の訪れが待ち遠しい一方で、辛いのが花粉による鼻水と目のかゆみ…
日本人における花粉症の有病率は詳細に出ていませんが、全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした調査では、花粉症の有病率は約42%、そのうち約3人に1人(約38%)は2~4月に飛散するスギ花粉に悩まされているという結果が出ています。
※参考:花粉症環境保健マニュアル
https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/2022_full.pdf
花粉カレンダー
中医学で考える花粉症
花粉症の予防と発症後で漢方薬での対応が異なります。
①花粉の予防
予防のポイントは「衛気:えき」を強化すること。
「衛気」とは、名前の通り「防衛の気」
いわゆる、現代医学の免疫の働きに近く、身体に悪影響を与える邪気から身体を守るバリア的な役割をしています。
そのため、「衛気」が不足すると、邪気の侵入口である皮膚や目/鼻/喉の粘膜のバリア機能が低下し、花粉や細菌、ウイルスなどが侵入しやすくなります。
このタイプの特徴は
□カゼを引きやすい
□汗をかきやすい(体を動かさなくても自然と汗がでる)
□息切れをしやすい
□肌が弱い
「衛気」を強化し、バリア機能を高めてくれる漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:衛益顆粒(玉屏風散)
※花粉症を悪化させやすいタイプ
上記で述べた「衛気」は「脾胃」で作られ、「肺」の働きで全身に運ばれます。
「脾胃」とは、現代医学で言う胃腸を指し、私たちが普段から摂っている食事や飲み物から栄養素を受け取り、強い「衛気」を生み出します。
また、中医学での「肺」は、一般的にイメージされる呼吸器系の働きに加え、「邪気」の侵入にかかわる皮膚や目/鼻/喉の粘膜も「肺」がコントロールしていると考えます。
「脾」と「肺」は、五行学説において「脾(土)は肺(金)を生む」と考え、母子関係にあるため「脾」の働きが低下していると、「肺」の働きも落ちてしまいます。
そのため、「脾」の働きが弱っている方や「脾」に負担をかけるような生活習慣をしている方は、花粉症を悪化させやすいと言えます。
●脾の働きが低下しているタイプの特徴
□疲れやすい
□食欲がない
□食後、お腹が張ったり、眠くなる
□軟便・下痢気味
●脾に負担をかける生活習慣
□肥甘厚味の食べ過ぎ(肥:脂っこい物、甘:甘い物、厚:味の濃い物)
□生もの(刺身や生野菜)の食べ過ぎ
□乳製品の食べ過ぎ
□体温より低いものの摂り過ぎ(冷たい飲み物、アイス)
これらの生活習慣は、「脾」の働きが低下し、花粉から身体を守る「衛気」が作られにくくなります。また、「脾」には身体内の水分代謝にも関係しているため、「脾」が弱ると身体内に余分な水が溜まり、ダラダラと垂れる鼻水や水っぽい鼻水へと繋がります。
②発症した場合の対応
鼻水のタイプにより以下のように分類されます。
●風寒タイプ
□透明で水っぽい鼻水
□鼻づまり
□身体が冷えると酷くなる
身体を温め、鼻水の原因となる余分な水分を取り除く漢方薬を使用すると良いでしょう。漢方薬の例:小青竜湯、苓甘姜味辛夏仁湯、葛根湯加川芎辛夷など
●風熱タイプ
□黄色く、粘り気のある鼻水
□目の充血や痒み
□口や喉が渇く
炎症(熱)が生じているので、炎症を清ましあげる漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:涼解楽(銀翹散)、荊芥連翹湯、五涼華など
目の痒みには、心サージ(サージフラボノイド含有食品)も効果的です。
最後に
花粉症状を抑える治療薬は下記のように様々あります。
・くしゃみ、鼻水:抗ヒスタミン薬、化学伝達物質遊離抑制薬
・鼻づまり:抗ロイトコリエン薬、ステロイド薬(点鼻、経口)
・花粉への抵抗を高める:舌下免疫療法、アレルゲン免疫療法
副作用(眠気、口渇など)が少なく効果の強い薬剤も出ていますが、それでも症状がなかなか良くらない、症状の悪化に伴い病院で貰う薬が増えている、新薬を試したみたけど効果がいまいちなど、花粉症の治療に悩まれている方は非常に多いと思います。
体質改善を行いながら、花粉に負けない身体作りを一緒に目指しませんか。
花粉症に関するお悩みや体質改善に興味がありましたら、お気軽にご相談ください。
薬剤師 中目 健祐