ちょいと前の事。夕食の準備に食材を確認していて、随分前に泥付きの、どこだったか産のえらい太い長ネギを買っておいたのを思い出した。
ビニール袋から出してみて驚いた。しばらく放置しといたその長ネギの先に、なにやら蕾のような膨らみがあるではないか。すかさずネットで、「長ネギ、つぼみ」で検索してみると、どうやらよくある事のようで、4月ごろの季節に長ネギを放置しておくと、つぼみが出るらしい。しかも硬くなってしまい食べられないそうだ。
まあ、みた感じ食べられそうではあったが、食器棚の引き出しの取っ手にスーパーの袋に入ったままぶら下げられた長ネギが、わずかばかりのその泥から栄養素を吸収し、たいして陽の光の当たらない台所で、四季の移り変わりを感じとり、袋の中で花を咲かそうと準備をしていたかと思うと、その健気さに、とても、食べてやろうという気が無くなってしまったのだった。
妻に事情を説明し、どうしようかと過ごしていたら、その後、妻の作るうどんの食材に使われそうになり、私は慌てて、せめてもと、つぼみが付いている茎を途中から切り取って、庭の鉢に植えてみることにしてみた。
それは、春の台風並みの季節風にあおられながらも、短いネギにはなったが、ちゃんと目的をはたそうとしている生命なのであった。