はじめに
新年度が始まり1ヶ月。4月から進学や就職、昇給などで環境が変わった方は、心や体に疲れが出やすい時期ではないでしょうか。
「ゴールデンウイークは心と体をしっかり休めて、連休明けからまた頑張ろう!」と思っても、学校や職場のことを考えると、「何だかやる気がでない」「眠れない」「食欲が湧かない」など、そんな“なんとなく不調”を感じている方、ひょっとしたら五月病かもしれません。
とは言え、病院に行くほどでもないし、精神安定剤や睡眠薬を使うことに少し抵抗があるという方も多いと思います。
実は「こころ」の不調も、体質のバランスが影響しています。
自身の体質を知ることが、不調から抜け出す第一歩。中医学の視点を取り入れて、自分を見つめ直してみませんか?
五月病の主な症状
五月病の主な症状として身体的、精神的、行動的症状の3つに分類されます。

また、五月病になりやすい人の特徴として次のような性格が挙げられます。
🟡真面目で几帳面、優等生タイプ
🟡完璧主義
🟡周囲への気を遣いすぎる
🟡我慢強く、無理をしがち
中医学で考える五月病
◆イライラ・モヤモヤ型👉肝気鬱結(かんきうっけつ)
✅気分が優れない
✅何だかイライラする
✅ため息がでちゃう など
このようなタイプは、中医学では「肝気鬱結(かんきうっけつ)」タイプといいます。
中医学における「肝」は、「疏泄(そせつ)」という働きを担っており、全身の気の流れをコントロールしています。この「疏泄」機能は、現代医学の「自律神経」の働きに近く、ストレスや憤りを強く感じたり、憂鬱な状態など精神的な負荷がかかると肝の「疏泄」機能が失調し、「気」の巡りが停滞します。この状態を「肝気鬱結」といいます。
⚠️このタイプに多い症状
✅神経質で細かいことが気になる
✅情緒が不安定になりやすい
✅PMSが酷い(胸や脇腹が張る、頭痛、過食気味になるなど)
✅月経不順
イライラ・モヤモヤ型には、「肝」の働きを改善させ「気」の流れを良くする漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:加味逍遥散、柴胡疏肝湯、四逆散など
⚠️「肝」は他にも…
「肝」は他の臓腑にも影響を及ぼし様々な症状の原因にもなります。
例えば、自律神経の乱れが「脾胃(胃腸)」にまで影響を及ぶと、精神的な刺激により下痢や腹痛を起こすことがあります。
また、胃腸の働きの低下から「痰湿(余分な水分)」が作られ、それが喉を塞ぎ「※梅核気」という症状を引き起こすことがあります。
※梅核気:炎症や異物がないのに、喉が詰まったような感じがする症状。中医学では、その症状が喉に梅の種(核)が詰まった感じと考え「梅核気」と呼んでます。
◆くよくよ型👉心脾両虚(しんぴりょうきょ)
✅仕事や学校での失敗を引きずりやすい
✅嫌なことを考えるとやる気がでない、不安感が増す
✅寝る前にあれこれ考えてしまい寝れない など
このようなタイプは、中医学では「心の血」が不足し、「脾」の働きが低下している「心脾両虚(しんぴりょうきょ)」の状態といいます。
🩸心血虚(しんけっきょ)
中医学における「心」は、一般的な心臓の機能である循環器系のポンプの働きに加え、精神的な働きである「こころ」としての役割も担っています。
特に「こころ」の状態と睡眠はダイレクトに関係していると考えられ、普段の生活で考え事をしていたり、悩み事がある時は、中々眠れないことがありますが、これも「心=こころ」の弱りが原因にあります。
🪫脾気虚(ひききょ)
脾は現代医学で言う胃腸を指しており、私たちが普段から摂っている食事や飲み物から栄養素(気や血)を生み出し各臓腑へと運ぶ働きがあります。
そのため、「脾」の働きが低下している「脾気虚」の状態だと、気(エネルギー)や血(栄養)が生み出されないので、疲れやすくなったり、気力ややる気の低下へとつながります。「ご飯を食べると元気になる!」「人間の体は食べたもので出来ている!」とよく言われますが、「胃腸」の働きを理解すると、この言葉はあながち間違いではありません。
<主な特徴>
✅動悸がする
✅眠りが浅い、夢を多く見る
✅食欲がない
✅食後すぐ眠くなる
✅下痢、軟便気味
くよくよ型のタイプには、「心」の血を補い、「脾」を立て直す漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:心脾顆粒(帰脾湯)、人参養栄湯など
◆ヘトヘト・くたくた型👉肝気虚(かんききょ)
✅もともと疲れやすい
✅ストレスや緊張に弱い
✅周りの目を気にしちゃう
などのタイプでありながら、みんなに必死に追いつこうと無理をしてしまう頑張り屋さんは、中医学では「肝気虚(かんききょ)」タイプといいます。
「肝」の「疏泄(≒自律神経)」が問題なく機能している場合は、精神的な負荷がかかっても一定の耐性があり、受け流すことができますが、「疏泄」の働きが低下している「肝気虚」タイプは、少しの精神的な負荷で自律神経のバランスを大きく乱れてしまいます。
<主な特徴>
✅ストレスや緊張する場面が嫌い
✅嫌なことから逃げがち
✅休みの日だと身体が軽く元気で活動的
「肝」の気を補う漢方薬を使用すると良いでしょう。
漢方薬の例:シベリア人参、逍遥顆粒+補中益気湯など
最後に
中医学には「心身一如(しんしんいちにょ)」という言葉があり、”心”と”身体”は切り離せないものと考えられています。「気持ちの問題だから」と我慢するのではなく、体の内側からバランスを整えてみましょう。
「何となくつらい」「前のように頑張れない」など、五月病や心の不調でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐