はじめに
コロナウイルス(COVID-19)の流行がようやく落ち着き、やっと感染症の恐怖から逃れられたと思いきや冬の訪れとともにインフルエンザやマイコプラズマ肺炎など別の感染症が流行り始めました。
以前までは病院で処方箋を貰い薬局に行けば適切な薬が貰えましたが、医薬品の製造過程や薬価引き下げの問題等から医薬品の流通が不安定となり抗生剤や咳止めなどの風邪薬が相次いで欠品となっています。
薬局に行っても薬が貰えない環境の中で私たちが出来ることは症状を発症してからの対応ではなく、いかにしてコロナウイルスやインフルエンザ、風邪に感染しない身体を作ることではないでしょうか。
中医学には「未病先防:みびょうせんぼう」という言葉があり、病気が発症する前に体質をみながら対応するという予防医学に近い考え方があります。病気が発症する前の対応を得意とする中医学の考えを取り入れ感染症に負けない身体作りを目指しませんか?
感染症カレンダー

風邪を発症した時の「カゼと漢方薬 – 日々の生活に漢方を」対応はをご参照ください。
中医学で考える風邪の予防
1.ウイルスや細菌から身体を守る
板藍根(ばんらんこん)は別名「漢方の抗生物質・抗ウイルス薬」と呼ばれ、中国の家庭では風邪やインフルエンザの常備薬として古くから親しまれています。
中国では1989年から1990年の肝炎が広まった際に効果的な抗ウイルス薬がなかったことから「板藍根」の研究が進み治療と予防の中心的な薬剤として使用されました。そして、2003年に発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)が大流行した際には中国の衛生局が「板藍根」に予防効果があると発表し、中国全土のみならず日本でもその名が広く知られるようになりました。
漢方的な働きは、清熱解毒(せいねつげどく)や涼血利咽(りょうけつりいん)の効能があるとされ、熱による炎症や血中の熱を取り除き、喉の痛みや熱を下げる働きがあります。西洋医学的には上記で述べたように、多くのウイルスの働きを抑制する抗ウイルス作用や幅広い抗菌スペクトルを示し多種類の細菌に対し効果を示すといわれています。
こんな時にオススメ!
・周りで風邪が流行っている時に
・人混みに行く前/行った後に
・テストを控えた受験生や仕事を休めない時に
・疲れからヘルペスが出そうな時に
板藍根にはエキスを抽出した顆粒タイプと飴タイプがあるため、外出の前後には顆粒をお湯に溶かしお茶として飲み、外出中は飴で喉をケアしたりなど様々なシーンで使用できます。また、健康食品のため子供から年配の方まで幅広く服用できます。
2.バリア機能を高める
ウイルスや細菌、花粉などから身を守るには、これらを体内に侵入されないように防衛力や抵抗力をつける必要があります。この感染源から身体を守る力を中医学では「衛気:えき」と言い、皮膚や鼻・気管支などの粘膜細胞の強化と関係し、外的刺激から身体を守る働きをしています。いわば、衛気とは体表にバリアを張り巡らせ邪気(ウイルスや細菌など)の侵入を防いでいる力といえます。
衛気力のチェック!
・風邪をひきやすい
・冷房や冷たい風に弱い
・汗をかきやすい
・鼻水が出やすい、垂れる
「黄耆:おうぎ」や「白朮:びゃくじゅつ」は昔から「衛気」の力を高める生薬としてペアで用いられ、衛気力が弱い方はこの2つが含まれた漢方薬である衛益顆粒(玉屏風散)を使用すると良いとされています。
また「衛気」の力を高めることは花粉症の予防にもつながります。
詳細は「花粉と漢方薬 – 日々の生活に漢方を」をご参照ください。
3.乾燥を防ぐ
感染症の予防には上記で述べたように衛気の働きを高めることが大切ですが、皮膚や粘膜などのバリア機能を保つにはウイルスや細菌などの異物を洗い流すためにある程度の潤いも必要となります。
乾燥度のチェック!
・口を開けて寝ている
・空咳がよく出る
・喉や鼻の中が乾燥しやすい
・呼吸器系が弱く、風邪を引くと咳が止まらない
中医学では、「邪気(ウイルス、細菌など)」の侵入にかかわる皮膚や目/鼻/喉の粘膜は「肺」がコントロールしていると考えます。漢方薬では「肺」の働きを高め潤いを与える麦味参(生脈散)や「肺」や「胃」の潤いを補う百潤露などを使用すると効果的でしょう。
4.幻の茸シベリア霊芝(しべりあれいし)
シベリア霊芝(ロシア名:チャガ)が生息するシベリア地方の村々では癌の患者が滅多に見られないことから、多くの科学者が調査したところ、地元の人たちはシベリア霊芝をお茶として飲む習慣があることがわかりました。そこから多くの研究が行われ、免疫の調節や炎症の抑制、利尿などの効能があるということが分かりました。
漢方的な働きは、補気健脾(ほきけんぴ)や補肝益腎(ほかんえきじん)があるとされ胃腸や肝腎(西洋医学の肝と腎とは異なる)の働きを高め、ウイルスや細菌などと戦うために必要な気(抵抗力)を補う働きがあります。
こんな方にオススメ!
・ちょっとしたことで風邪を引く
・すぐ疲れる、体力の低下が気になる
・普段から食欲がない
・板藍根を服用するとお腹を下す
最後に
未病の段階からの予防を得意とする中医学、病気になってからの治療がベースにある西洋医学、それぞれの医学には長所と短所があります。
中医学ならではの長所を活かし体質に合った漢方薬でコロナやインフルエンザ、風邪などの予防、重症化しない身体作りのお手伝いができればと思います。感染症の予防、病気にならない身体作りに興味がありましたら、ぜひご来店ください。
薬剤師 / 国際中医専門員(漢方の専門家) 中目 健祐