楽しみにしていた、テニス、ウィンブルドン選手権の放送を、夜中に見ていた時の事である。
よもや試合の勝敗も決まりそうなそんな時、突然、家の屋根に何かが落ちてきた。ドサッ!!の後、ズズズー!っと滑っていくその物音に、すでに就寝していた奥さんも『なんだ!なんだ?』と、起きてきた。
空から降ってくるであろう物体のたぐいを、あれこれ頭を巡らせて考えてみた。雹か?、、、ヒョウか? 隕石か? 小さめの宇宙人か? 私のスーパーコンピューターがはじき出した答は鳥だ。渡り鳥や鳩、カモが飛行中に、突然心臓が止まり、落下することがある。
試合も気になるが、恐る恐る手回しの懐中電灯を持って、家の回りを照らしてみた。軒下に何かいる。せっかくのウィンブルドン選手権の視聴を中断させたズズズー!の正体はキジだった。ここの市の花鳥木に指定されているキジである。
猫かキツネか何かに追い立てられ、慌てて飛び上がって屋根に激突したのだろう。近づいたが逃げない。腰が抜けたのかもしれない。怪我をしているかもしれないと思ったが、明るくなるのを待った。
また、この時の夜空がすごかった。今まででベストと思えるくらいの星空であった。天の川もちゃんと見える。私のスマホには、その位置にある星の名前や正座やらがスマホを天に向けただけで分かるアプリが入っている。双眼鏡とスマホでひとしきり夜空を楽しんでいるとき、変なひかりかたをする星をみつけた。蛇つかい座という正座の中で、10秒ぐらいに一回、けっこうな明るさで点滅するものがある。アプリでは、現在見える、恒星から星団、宇宙ステーションや人工衛星の果てまでが表示されるが、当てはまるものが無い。30分ぐらい見ていたが、ずうっと同じに点滅を繰り返していた。
結局、そちらの正体は分らずであった。当たり前だ。
目が覚めて、明るくなってきたし、そろそろキジの様子を見てみるかと布団の中で想っていると、昨夜の軒下のあたりから、けたたましい鳴き声が聞こえた。どうやら大丈夫だったようだ。一応確認すると、普通にヒョコヒョコ歩き、また時々鳴いていた。回りは田んぼだ。元々はキジの住みかだった所に建てた家である。ウッドデッキにキツネも来たりする。そんなところだ。
まさに星の降る夜は、キジの降る夜でもあった。